「言うことを聞きなさい!」
「言うことを聞かないとおやつあげないよ!」
子育て中に、必ず一度は使ったことがあるフレーズではないでしょうか。
でもこれ、「命令に従いなさい。従わないならどうなるかわかってんの!?」という脅しと紙一重なんです。
この記事でわかること
- 子どもが言うことを聞かないのはなぜ?(理由がわかるとイライラが減ります)
- 「この人の言うことなら聞ける」関係になる3つのコツ
- どうしても言うことを聞かせなければならない場面の備え
- イライラして限界…というときの相談先
執筆・監修:元小学校教員(15年)/公認心理師・現役スクールカウンセラー。
子どもが言うことを聞かないのはなぜ?
そもそも、聞けない時期だから
まず知っておいてほしいのは、幼児期〜小学生の子どもは、気持ちや行動にブレーキをかける力(自制心)がまだ発達の途中だということです。「わかっているのにやめられない」「今やりたい気持ちが勝ってしまう」のは、この時期の標準装備。言うことを聞かない=育て方の失敗、ではありません。
「うちは男の子だから聞かないの?」と聞かれることもありますが、性別よりも発達の段階と個人差のほうがずっと大きい、というのが現場での実感です。5歳ごろの「イヤ!」の名残も、小学生の口答えも、それぞれの時期の自然な姿です。
「何を言うか」より「誰が言うか」
そのうえで、こちらの思いを聞いてもらうために一番大切なのは何か。結論から言うと、
「日頃の関係」
これにつきます。
「この人の言うことなら聞けるけど、この人の言うことは聞きたくない」——誰にでもありますよね。
たとえば、あなたが野球をやっているとします。なかなかヒットが打てないときに、アドバイスをくれる人が2人います。
- 大谷翔平
- 近所の野球好きのおっちゃん
どちらのアドバイスを聞きたいですか? もちろん大谷翔平ですよね。スーパースターですもん。
つまり、「この人の言うことなら聞ける!」という人になればいいんです。とはいえ、スーパースターになる必要はありません。そういう関係になるちょっとしたコツを身に付ければいいんです。
学生時代、「この先生の言うことは絶対聞きたくないけど、あの先生の話は自然と聞き入れられる」という違い、ありましたよね。あの違いを思い出してみるのもいいかもしれません。
「この人の言うことなら聞ける」関係になる3つのコツ
コツ① あなたの思いを伝える(存在承認)
まずは、「生まれてきてくれてありがとう」と存在そのものを認めることです。
大きくなってくると反抗もしだします。「生意気に!」と感じると思います。でも、その生意気に感じるお子さんも、生まれてくるときは「すごく愛おしい、早く会いたい!」という気持ちでいっぱいでしたよね。言うことを聞かなくても、可愛くて仕方がなかったはずです。
それに「生意気になった」を別の見方をすると、言い返せるほど脳が発達してきている証拠。健全な発達です!
生まれてきたときの気持ちに思いを馳せながら、もう一度、我が子のいいところを探してみましょう。
「えっ、そんなこと無理!」と感じるのも無理はありません。人間の脳にはエラーを判定する機能はあるものの、できたところを無意識に探す機能は備わっていません。だから意識的に探さないと、「できた部分」は目に入らないんです。人のできないところばかり探せる人は多いのに、いいところばかり見出せる人がなかなかいないのはこのため。人は基本的に粗探しのほうが得意なんです。
逆に言えば、できた部分に注意を向けられるのは、それだけ高等な脳の使い方をしているということ。「できない部分を見る」のは無意識でも、幼い子でもできます。だからこそ、意識的にできた部分を見ることが重要なんです。
そして見つけたら、恥ずかしがらずに子どもに伝えましょう。
ちなみに僕は、我が子に「父ちゃんの宝物だよ」(存在承認)とふとした時にささやいています。子どもの反応がない時もありますが、一方的に伝え続けています。
また、慌ただしい日常で流れてしまいそうな子どものいいところを忘れないように、日記アプリに少しずつ記録を残すようにしています。今後、子育てに困った時に、我が子のいいところを振り返ることができるように。
コツ② スキンシップを多く
抱きしめる
大人でも、抱きしめられるとホッとするときがあります。特に理由なく、たくさんたくさんギュッーーーてしてみましょう。
実は、抱きしめる側にもメリットがあるんです。ストレスが軽減するという研究結果もあるようです。お互いWIN-WINの関係ですね。
相手の体の一部に手をおきながら話す
こう書くとセクハラ!?みたいになりますが、子どもの背中に手を当てて話をしたり、聞いたりします。一例ですが、非言語での愛情表現の一つです。初めは短時間からスタートでいいと思います。子どもが慣れてきたら次第に長くしていくことも検討してください。
コツ③ 話を聞く
笑顔で
これは対話の基本です。笑顔で話を聞いてくれると安心します。ホッとします。話したくなります。
本当に聞きたいという気持ちで
笑顔で聞いてくれるんだけど、本当に興味を持ってくれているのか疑問に思うこと、ありませんか? 子どもも同じで、ちょっとした仕草や表情、目線などの非言語情報から読み取っています。
子どもにそう思わせないように、子どもが話している時間は100%集中してみましょう。もちろん、いつもいつもは難しいです。特に「ねえねえ」と話しかけてきた時は、あなたに何か伝えたい時。この時が大切な時間です。
「でも」「けど」は使わない
子どもの話を聞いていると、怒れてくる時もあります。そんな時でも、一息深呼吸をして、「でも」「けど」を使わないで思いを伝えていきましょう。
「でも」「けど」などの言葉には、相手の考えを否定する意味が含まれます。考えを否定してくる人とは、あまり話したくありませんよね。
とはいえ、常に肯定することが正しいわけではありません。間違っている時は、間違っていると伝えなければなりません。そのときは、「私」を主語にして伝えます。
悪い例:子ども「悪口言ってきたから、殴っちゃった。」
親「でも、腹が立ったからといって、人を殴って傷つけてはいけないと思うよ。」
良い例:子ども「悪口言ってきたから、殴っちゃった。」
親「私は、腹が立ったからといって、人を殴って傷つけてはいけないと思うよ。」
微妙なニュアンスの違いですが、自分が子どもの立場なら、どちらがすっと腹に落ちるか。または、文頭の「でも」「けど」をただ抜いて伝えるだけでも、ストレスなく聞くことができます。
そもそも子どもに「言うことを聞かせる」って…?
ここで一度、「言うことを聞かせる」ということについて考えてみませんか。僕は、そもそもこの考え方に、危険性もあるように感じています。
僕たちは、自分の気分で子どもを動かそうとします。たとえば、こちらの時間がない時にイライラして、全く急ごうとしない子どもを怒る。よくある状況ですが、これを会社の上司と自分に置き換えてみます。
急いで顧客との打ち合わせに行かなければならない上司に、それを知らない僕が人生相談をしたら、「こっちは急いでんの!後にしてくれる!?」と怒られた——。上司が急いでいると知らなかった僕は、「そんなん知らんかったし。なんで怒られないとダメなの!?」と逆ギレするでしょう。
何が言いたいかというと、こちらの状況を説明せずに、または無理なお願いをしておきながら、理不尽なことを子どもに要求しているかもしれないということです。こういう時は子どもの心が離れていく瞬間です。
「こちらの都合だけで子どもを動かそうとしていないか」を、一度振り返ってみるのもいいかもしれません。
どうしても言うことを聞かせなければならない時
でも、どうしても言うことを聞かせないといけない時があります。それは、命の危険があるときです。
津波・地震などの自然災害時や、道路へ飛び出しの危険がある時など、必ず子どもを守らなければいけない時。そんなときに指示を聞いてもらえるように、互いに冷静な時に「こういう時は必ず言うことを守ってね」と伝えておくことです。ポイントは「冷静な時に」。ようは、何気ない日常で、です。
それでも子どもが言うことを聞いてくれない場合は
子どもが言うことを聞かない時には、子どもなりの思いがあるかもしれません。子どもが問題行動を起こす時には「目的」があります。それは——
- もっと注目してほしい
- 損得を考え、その行動をしてまでも達成したいことがある
などが考えられます。「なぜこの子はこういうことをするのだろう」と子どもの立場になって考え、その答え合わせを子どもに確認してみます。
「どうしてああいうことをしたの?」
その際、「叱ってやる」という気持ちではなく、純粋に「あなたの考えを知りたい」というスタンスで問いかけること。前述の通り、怒りを口に出さなくても、人間は非言語情報から多くを感じ取っていると言われます。
初めは「別に。やりたかっただけ。」と言うと思います。それはそれで「そうなんだ〜」と聞き流してもいいです。これを繰り返しているうちに、この人は本当に話を聞いてくれるという「安心感」と、本当のことを言っても否定されないという「安心感」で、本音を話してくれるようになります。つまり、あなたとの信頼関係が構築されます。
問題行動の背景については、こちらの記事でさらに詳しく書いています。
子どもの問題行動の原因と対処法|小学生に多いサインを元教員が解説
イライラして限界…疲れたときは
ここまで読んで、「わかってはいるけど、その余裕がない」と感じた方もいると思います。それは自然なことです。親に余裕がない状態で、コツだけ実行するのは無理があります。
限界を感じたら、一人で抱え込まずに頼れる先があります。
- 市区町村の子育て相談窓口——電話一本で相談できます。「こんなことで」と思う内容で大丈夫です
- 一時預かり・ファミリーサポート——数時間子どもを預けて休む制度。自治体の窓口で案内してもらえます
- 学校のスクールカウンセラー——就学後なら、子どもの行動の相談も親自身のしんどさの相談もできます(無料です)
「預けるなんて」と罪悪感を持つ必要はありません。休んで余裕が戻れば、この記事のコツは自然にできるようになります。
まとめ
- 言うことを聞かないのは、自制心が発達途中のこの時期の標準装備。育て方の失敗ではない
- 大切なのは「何を言うか」より「誰が言うか」=日頃の関係
- 3つのコツ:①存在承認(いいところを意識的に探して伝える)②スキンシップ ③100%集中して聞き、「でも」「けど」を使わず「私」を主語に
- 命に関わる場面のルールは、冷静な時に約束しておく
- 行動には子どもなりの「目的」がある。「あなたの考えを知りたい」のスタンスで聞くと、信頼関係が育つ
- 親が限界のときは、休むことが先。相談先を頼っていい
子どもとの信頼関係を築くことは、子どもの思いに寄り添うことでもあります。頭ごなしに叱るのではなく、「なぜそうしたかったんだろう?」「どんな目的があったんだろう?」と考えてみることを最優先にしてみませんか。
子どもは、自分の気持ちをわかってくれる人が大好きです。これは子どもだけではないかもしれません。大人もそうですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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