小学生の癇癪が家だけで出ると、親は「私の育て方のせい?」と考えてしまいます。私は、家でだけ出るのは、家で素直な気持ちを出せている証拠だと考えています。癇癪の最中に親がすることは、話しかけないで、そばにいることです。
学校の先生からは「落ち着いていますよ」と言われる。それなのに、家に帰ると宿題や着替えのことで泣き叫び、ものを投げる。毎晩そのくり返しで、寝かせたあとに検索している方もいると思います。
元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして保護者の相談を受けています。学校で見える子どもの顔と、家で見える顔は違います。両方を知る立場から、家でだけ出る癇癪への向き合い方をまとめます。
小学生の癇癪が家だけなのは出せている証拠
家でだけ癇癪が出るお子さんは、学校では気持ちを抑えて過ごしています。抑えた気持ちを、安心できる家で出していると考えると、親の受け止め方が変わります。まず、お子さんの様子に近い行を見てください。
| お子さんの様子 | 考えられること | 親が今日すること |
|---|---|---|
| 学校では落ち着いていて、家でだけ出る | 外で頑張った分を家で出している | 最中は話しかけず、そばにいる。学校の様子を担任に聞く |
| 学校でも出るようになった | 抑えきれない困り感が学校にもある | 担任に連絡し、スクールカウンセラーへの相談を考える |
| ものを使う・けががある・眠れない | 気持ちの問題だけでなく、体や発達の相談が要る | 小児科や発達相談に、親が先に相談する |
どの行でも、癇癪そのものを家でゼロにすることは目標にしません。目標は、出たあとに親子が話せる状態に戻ることです。
外で頑張った分が家で出る
学校は、子どもにとって気を張る場所です。授業中はじっと座り、友だちとぶつからないように言葉を選び、先生の指示に合わせて動いています。
家に帰って荷物を置いたとき、張っていた気持ちがゆるみます。ゆるんだところで、小さなことがきっかけになって泣いたり怒ったりします。家でだけ出るのは、家が気を張らなくていい場所だからです。
「私のせい」ではない
家でだけ出ると、親は自分の接し方を疑います。でも、学校での落ち着いた顔は、家で気持ちを出せているから保てている面があります。
親が自分を責め続けると、その不安はお子さんに伝わります。子どもは親の表情をよく見ているので、「また泣かせてしまった」と自分を責め始めます。親が自分を責めないことは、お子さんのためでもあります。
癇癪の最中は話しかけない
癇癪の最中に親がすることは、話しかけないことです。泣き叫んでいるときの子どもには、言葉はほとんど届きません。「落ち着いて」「何がいやなの」と声をかけるほど、子どもは追い詰められます。
私が保護者にお伝えしているのは、何も言わずにそばにいることです。言葉で静めようとしない代わりに、親がそこにいることだけを伝えます。
背中をさする、そばにいる
そばにいるときの動きは、背中をさするか、少し離れて座っているかのどちらかで十分です。触られるのをいやがる子には、同じ部屋にいるだけにします。
どちらにするかは、お子さんの様子を見ながら決めてください。さすって落ち着く日もあれば、手を払われる日もあります。払われたら、黙って少し離れて座ります(払われたことを責めると、癇癪が長引きます)。
「なぜ」はその場で聞かない
その場で「なんで怒っているの」と聞くのは、やめたほうがいい対応です。癇癪の最中の子どもは、自分でも理由を言葉にできません。聞かれても答えられず、答えられないことがさらに悔しくて、泣き方が強くなります。
すぐに話しかけるのも同じです。理由を聞くのは、おさまって落ち着いてからにします。
手が出るときは距離をとる
たたいてくる、ものを投げてくるときは、親がけがをしない距離まで離れます。親が力で抑えるのは、おすすめしません。親が圧倒的に強いと、子どもの中に恨みが残ります。
全部を受け止めるのも、よくありません。受け続けると、ぶつけ方が強くなっていきます。「たたくのはなし。落ち着いたら戻ってくるね」と短く言って、見える場所で待ちます。
おさまってから話す
話をするのは、癇癪がおさまって、お子さんがふだんの声で話せるようになってからです。おさまった直後ではなく、お風呂や寝る前など、落ち着いた時間を選びます。
落ち着いた時間に短く聞く
聞くときは、理由を問い詰める形にしません。「さっき、いやなことあった?」と1つだけ聞いて、答えが出なければ「言いたくなったら教えて」で終えます。
子どもが話し始めたら、途中で正しいことを言いたくなっても、最後まで聞きます。親が伝えたいことは、聞き終わってから1つだけにします。順番は「先に気持ちを聞く、あとで伝える」です。
そのまま言える一言
言葉に迷うときは、次の一言を参考にしてください。
| 場面 | そのまま言える一言 |
|---|---|
| 最中(声をかけるなら1回だけ) | 「ここにいるからね」 |
| 手が出たとき | 「たたくのはなし。落ち着いたら戻ってくるね」 |
| おさまった直後 | 「お水いる?」(理由は聞かない) |
| 落ち着いた時間 | 「さっき、いやなことあった?」 |
| 答えが出ないとき | 「言いたくなったら教えて。聞くから」 |
学校での様子は担任に聞く
家でだけ出ているなら、学校での様子を担任に聞くのが最初の一手です。家で見えている姿だけで、親が原因を決めないためです。
連絡帳や電話で、次のように聞いてみてください。「家ではけっこう荒れることがあって、学校では最近どんな様子ですか?」。学校での姿を悪く言う必要はなく、家の様子を正直に伝えるだけで十分です。
担任には見えている頑張り
担任からは、親に見えないものが見えています。授業中にどれだけ気を張っているか、友だちとの間で我慢している場面があるかです。
「学校ではよく頑張っていますよ」と返ってきたら、その頑張りの分が家で出ていると考えられます。頑張っている中身がわかると、家で何をゆるめればいいかが見えてきます。
担任が覚えていないなら別の理由
お子さんが「先生に言われたのがいや」と理由を話したとき、担任に聞くと覚えていないことがあります。担任が覚えていないことは、本当のきっかけが別にある可能性を考えます。
友だち関係や、授業のわからなさや、体の疲れが隠れていることがあります。きっかけを1つに決めず、担任と一緒に別の理由を探してください。
受診や相談を考えるサイン
家でだけの癇癪は、多くの場合、学校でのがんばりが家で出ている状態です。ただ、次の様子が2週間以上続くときは、小児科や自治体の発達相談に相談してください。
- 癇癪のあとに、本人や家族がけがをする
- 夜に眠れない、朝に起きられない
- 食事の量が落ちた
- 前は楽しめていた遊びを楽しめなくなった
- 学校でも癇癪が出るようになった
私は医師ではないので、発達の特性があるかどうかを判断する立場にはありません。感じやすさや切り替えの苦手さが背景にある子もいます。気になるときは、スクールカウンセラーや発達相談で、親が先に話すところから始めてください。
毎晩受け止める親が疲れたら
家でだけ出る癇癪は、受け止める人が家の人だけになります。学校の先生も、まわりの親も、その場面を見ていません。「大げさでは」と言われて、親だけが毎晩消耗していくことがあります。
親が受け続けたら、どんな親でも持ちません。親の消耗がたまると、最中にそばにいることも、おさまってから聞くこともできなくなります。親が自分のために休むことは、お子さんの癇癪への対応の一部です。
自分を責める気持ちが続いているなら、不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらも読んでみてください。親の限界のサインと、自分を責めないための考え方をまとめています。不登校でなくても、毎晩の癇癪を受け止めている親にそのまま当てはまります。
よくある質問
Q. 家でだけ癇癪が出るのは、発達障害ですか
家でだけ出ること自体は、発達障害のサインではありません。学校で気を張った分を家で出している子は、特性の有無に関わらずいます。
ただし、次の様子が重なるときは、発達相談で話してみてください。
- 切り替えに、毎回長い時間がかかる
- 音や光に強く反応する
- 学校でも出始めた
診断は医師の仕事なので、私は「相談していい状態か」だけをお伝えしています。
Q. きょうだいの前で癇癪が始まったら、どうしますか
きょうだいには「今はそばにいるね。あとで話そう」と短く伝えて、別の部屋で待ってもらいます。癇癪が終わったあとに、きょうだいの話を聞く時間を必ずとります。
おさまってから「びっくりしたね」と声をかけるだけでも、きょうだいは置いていかれたと感じにくくなります。
Q. 父親(母親)は「甘やかしているからだ」と言います
家でだけ出る癇癪は、見ていない側から甘やかしに見えます。相手を説得しようとすると、夫婦の言い合いになります。
共有するのは「最中は話しかけない。おさまってから聞く」の順番1つだけで十分です。考え方をそろえるのは難しくても、子どもの前での振る舞いはそろえられます。二人だけで難しいときは、スクールカウンセラーに夫婦で相談するのも方法の1つです。
まとめ
- 家でだけ癇癪が出るのは、家で素直な気持ちを出せている証拠
- 最中は話しかけない。背中をさすか、そばにいる
- 「なぜ」はその場で聞かない。落ち着いた時間に短く聞く
- 手が出るときは、力で抑えず距離をとる
- 最初の一手は担任に学校での様子を聞く
- けが・眠れない・学校でも出るが2週間続いたら、相談する
- 受け止める親が自分のために休むのも対応の一部
今日できる一歩は、次に癇癪が始まったときに、何も言わずに同じ部屋に座ることです。
学校で頑張っている分を、家で出せているお子さんです。出せる場所があることは、お子さんにとって大きな支えです。最中にそばにいて、おさまってから聞く日を重ねると、癇癪は少しずつ短くなっていきます。
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