「今日は行けたのに、翌日はまた布団から出られない」——
行ける日と行けない日を繰り返す“五月雨(さみだれ)登校”は、親御さんの気持ちも一緒に揺さぶられて、いちばん消耗する時期かもしれません。
元小学校教員として15年、今はスクールカウンセラーとして学校現場にいる立場から、五月雨登校の子への関わり方を、現場で実際に効いた視点を中心にお伝えします。結論から言うと、鍵は「登校する理由をどう取り戻すか」です。
目次
そもそも、なぜ行けたり行けなかったりするの?
五月雨登校の子を見ていて、現場で強く感じることがあります。それは、行きしぶりの子の多くは「学校に登校する理由」を失っているということ。
登校しても、いいことがない。授業はわからない、仲のいい友だちと過ごす時間もない——この状態だと、学校へ行く理由はほとんど残っていません。「行けたり行けなかったり」は、わがままでもサボりでもなく、“行く理由”と“行きたくない気持ち”が日によって綱引きしている状態なのです。
ここを取り違えて、「昨日行けたんだから」と行けた日を基準に期待してしまうと、親も子も苦しくなります。まずは「今は登校の理由が細っている時期なんだ」と捉え直すところから始めましょう。
現場でいちばん効いたのは「友だちの力」
教員として五月雨登校の子に関わる中で、家族や先生の言葉よりも圧倒的に強かったのが「友だちの力」でした。
保健室登校や別室登校ができた日には、必ず仲のいい友だちに会いに来てもらい、一緒に楽しい時間を過ごせるようにしていました。教室に入れなくても、「学校に行けば楽しいことがある」という実感が、そのまま次の登校の理由になっていくからです。
具体的な工夫としては、こんな形があります(学校やお子さんの状況に合わせて、担任の先生と相談しながら進めてください)。
| 学年 | 友だちとのつながりの作り方 |
|---|---|
| 高学年 | 別室登校できた日に、放課後など授業後に仲のいい友だちと一緒に遊ぶ時間を設定する。「会える予定」が次の登校の動機になる |
| 低学年 | 子どもだけで遊ぶ約束を取り付けるのは難しい年頃。先生や保護者が間に入って、登校した日に友だちと関われる場面を用意してあげると効果的 |
ポイントは、「教室に戻ること」をゴールにしないこと。まずは「学校=つらい場所」から「学校=楽しいことがある場所」へ、イメージを塗り替えていくのが先です。
やりがちだけど逆効果な対応
よかれと思ってのことでも、登校の理由が細っている子を追い詰めてしまう関わりがあります。
- 「休みグセがつく」と考えて無理やり連れて行く…登校する理由がない状態で無理に行かせるのは、子どもにとっては「つらい所へ修行してこい」と言われるのに近い体験です。理由が戻らないまま押しても、綱引きの“行きたくない側”を強めてしまいます。
- 「学校は行くもの」という価値観で押し切る…親の価値観は自然なものですが、それを理由に無理をさせると、子どもは「わかってもらえない」と心を閉じてしまいがちです。
- 行けた日を強く褒めすぎる…喜びたい気持ちはよくわかりますが、褒めが大きすぎると「行けなかった日=ダメな日」という圧になり、翌日のハードルが上がることがあります。淡々と、でも温かく迎えるくらいがちょうどよいです。
「登校しても、いいことがない」——この状態を変えないまま登校だけを求めても、子どもは動けません。押す前に、“行く理由”を一緒に育てるという順番を大切にしてください。
見きわめの軸:頑張っていい時/休養が先の時
五月雨登校の子に「もう少し頑張ってみようか」と声をかけていいのか、それとも「今は休ませるべき」なのか。現場では、次のようなサインで見分けていました。
心身のエネルギー低下のサインが出ているときは、無理をさせず、医療機関への受診も考えたい段階です。
- 朝、なかなか布団から起き上がれない
- 夜中に目が覚める(中途覚醒)など、睡眠が乱れている
- 食欲が落ちている
- 以前は楽しんでいたことを、楽しそうにしなくなった
こうした様子が見られるときは、心と体が「休みたい」と発しているサインです。まずは休養を最優先に、必要に応じて医療機関やスクールカウンセラーに相談してください。
一方で、登校することに何か楽しみがある状態(会いたい友だちがいる、好きな活動がある等)なら、本人や学校と相談しながら、少しずつ頑張ってみるのもよいでしょう。「頑張らせる」かどうかは日数や皆勤で決めるのではなく、子どもの心身の状態と“楽しみの有無”で判断するのが、現場での一つの目安です。
よくある質問
Q. 別室登校や保健室登校でも意味はありますか?
A. 大いにあります。教室に入れなくても「学校とつながっている」実感は、次の一歩の土台になります。別室で友だちと関われる時間が作れると、さらに登校の理由が育ちます。
Q. 行けた日と行けない日、親はどう振る舞えば?
A. どちらの日も、できるだけ淡々と、温かく。行けた日を過剰に喜ぶと、行けない日のプレッシャーになります。「行っても行かなくても、あなたの味方」という土台が、結局いちばん子どもを動かします。
Q. 勉強の遅れも気になります。
A. 授業が「わからない」ことが登校のハードルになっている子もいます。ただし、心のエネルギーが戻る前に勉強を急ぐと逆効果です。順番については不登校の勉強の遅れ、どこから取り戻す?を参考にしてください。
まとめ:押す前に「登校する理由」を育てる
- 五月雨登校は、多くの場合「学校に行く理由」が細っている状態
- 家族や先生の言葉より、友だちの力が登校の理由になりやすい
- 別室・保健室でも、友だちと楽しい時間を持てる工夫を
- 「休みグセ」「学校は行くもの」で無理に押すのは逆効果
- 頑張らせるかは日数でなく、心身の状態と“楽しみの有無”で見きわめる
- 睡眠・食欲・意欲の低下が見られたら、休養と受診を優先
行ったり行かなかったりの日々は、親御さんにとって本当に消耗するものです。でも、それは子どもが「行きたい」と「行けない」の間で必死に踏ん張っている証でもあります。焦らず、まずは学校が「楽しいことがある場所」になるよう、一緒に理由を育てていきましょう。判断に迷うときや心身の不調が続くときは、担任の先生・スクールカウンセラー・医療機関など専門の窓口に相談してください。











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