子供を怒りすぎた後悔で、寝顔を見ながら眠れない夜があります。私は、強く言ったこと自体を責めなくていいと考えています。翌日に見直すのは「言った中身」でなく「言い方」です。
朝の支度が進まない、宿題をやらない、学校に行きたくないと言う。気づいたら大きな声が出ていて、子どもが黙って部屋に入っていった。そんな日の夜に、この記事を読んでくださっている方もいると思います。
元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして保護者の相談を受けています。言うべきことを伝えながら、子どもとの関係をどう保つか。教員として長く考え続けてきたことです。
子供を怒りすぎた後悔は「言い方」で見直す
強く言ったことを後悔したら、まず「何について言ったか」と「どう言ったか」を分けて考えます。中身が必要なことでも、言い方で子どもが苦しくなっていることがあります。今日の場面に近いものを選んでみてください。
| 強く言った場面 | 考えられること | 翌日にすること |
|---|---|---|
| 命や安全、人を傷つける言動 道路に飛び出した、友だちをたたいた | 伝えた中身は必要なこと | 中身は取り消さない。言い方だけ振り返る |
| 毎日の生活のこと 支度・宿題・ゲーム・行き渋り | 正しいことを、続けて言いすぎたのかもしれない | 先に気持ちを聞き直してから、伝え直す |
| ほぼ毎日、強く言っている 自分でも止められない | 親の疲れがたまっているのかもしれない | 聞く時間を少しずつ増やす。親も誰かに話す |
どの場面でも、1回強く言っただけで親子の関係が決まるわけではありません。
強く言うこと自体は悪くない
私は、強く言うことが悪いとは思っていません。命に関わることや、人としてどうかと思う言動には、大人がはっきり伝える必要があります。
後悔している方の多くは、言った中身が間違っていたわけではないと思います。
苦しいのは逃げ道のない正論
関係がこじれるのは、正しいことだけを続けてぶつけたときです。正論は正しいぶん、言われた側に言い返す余地がありません。
「なんでやらないの」「何回言ったらわかるの」と続くと、子どもは逃げ道がなくなります。そうした場面が重なると、子どもは「この人には、どうせ正論を言われて聞いてもらえない」と感じ始めます。後悔のもとは、強さより逃げ道のなさのほうにあります。
翌日は「気持ちを聞く」から始める
強く言った翌日は、伝え直す前に、お子さんの気持ちを聞くところから始めます。順番は「気持ちを聞く→そのあとで伝えたいことを伝える」です。
言い方を謝り、中身は残す
謝るなら、言い方について謝ります。「昨日は大きな声を出して、ごめんね」で十分です。
ただ、命や安全に関わる中身まで取り消す必要はありません。「でも道路に飛び出すのは本当に危ないから、そこは変わらないよ」と、中身は短く残します。言い方を謝っても、親の言葉の重さは減りません。
伝える前に気持ちを聞く
次に、あの場面でお子さんがどう感じていたかを聞きます。問い詰めずに、落ち着いている時間に短く聞きます(朝の支度中や、登校前の玄関は避けてください)。
お子さんが話し始めたら、途中で正しいことを言いたくなっても、いったん最後まで聞きます。聞き終わってから、親が伝えたかったことを1つだけ伝えます。
翌日そのまま使える言い方
言葉に迷うときは、次の言い方を参考にしてみてください。
| 場面 | そのまま言える一言 |
|---|---|
| 話を切り出す | 「昨日のこと、ちょっと話してもいい?」 |
| 言い方を謝る | 「大きな声を出したのは、よくなかったね。ごめんね」 |
| 気持ちを聞く | 「あのとき、どんな気持ちだった?」 |
| 話してくれたあと | 「そう思ってたんだね。教えてくれてありがとう」 |
| 伝えたいことを1つ | 「宿題は、何時からならできそう?一緒に決めよう」 |
お子さんが話したがらない日は、無理に聞き出さなくてかまいません。「話したくなったら教えてね」で終えて、別の日にもう一度聞きます。
子どもから出てくる言葉を知っておく
強く言われることが続いた子からは、「俺の話を聞いてくれない」「いつも怒られてばっかり」の言葉がよく出てきます。親が一番伝えたかった中身は、子どもの記憶にあまり残っていません。
残るのは「聞いてもらえなかった」のほうです。ここに気づけると、翌日に何から始めればいいかがはっきりします。
「聞いてくれない」は合図になる
お子さんが「どうせ聞いてくれないじゃん」と言ったら、責める言葉として受け取らなくて大丈夫です。「話を聞いてほしい」と言われているのに近いと、私は受け止めています。
言われたら、「そう感じてたんだね。今日は聞くよ」と返してみてください。その場で全部わかり合えなくてもかまいません。
好かれたい気持ちはあっていい
親が子どもに好かれたいと思うのは、おかしなことではありません。私は、好かれたい気持ちを持ったまま、いけないことを伝える方法を考え続けてきました。
教員の中には、「好かれるために、言うべきことを言えないのは良くない」と言う人もいます。私の考えは違います。好かれるに越したことはありませんし、よく思われたい気持ちは、人ならだれにでもあるものです。
好かれたいから順番を変える
好かれたいからといって、言うべきことを言わずに済ませるわけではありません。変えるのは順番です。先に気持ちを聞いて、そのあとで伝えたいことを伝えます。
この順番を続けていくと、子どもの中で「この人は話を聞いてくれる」「気持ちをわかってくれる」が増えていきます。そうなると、強く言われる日があっても「この人に言われたら、しょうがない」と受け止めやすくなります。
1回で戻らなくても大丈夫
翌日に謝って気持ちを聞いても、その日のうちに元どおりになるとは限りません。信頼は、時間をかけて少しずつ積み重なっていくものです。
翌日に子どもがそっけなくても、失敗ではありません。今日聞いて、明日も聞く。そのくり返しが、次に強く言ってしまった日の支えになります。
毎日続くなら親の疲れを見る
ほぼ毎日強く言ってしまうなら、言い方の工夫より先に、親の疲れを見てください。疲れがたまると、どんな人でも声が大きくなりやすくなります。
行き渋りや学校のことで、親が一人で抱えていることも多いと思います。自分を責める気持ちが続いているときは、不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらも読んでみてください。限界のサインと、自分を責めないための考え方をまとめています。
よくある質問
Q. 怒りすぎると、子どもに悪い影響が残りますか
1回強く言ったことで、子どもの将来が決まるわけではありません。翌日に気持ちを聞き直せば、関係は戻していけます。
ただし、次の様子が2週間以上続くときは相談してください。たたく・人格を否定する言葉が続くときや、子どもが親をこわがって話さないときです。学校のスクールカウンセラーや、自治体の子育て相談が窓口になります。
Q. 謝ろうとしたら、子どもに無視されました
無視されても、謝ったことはお子さんに届いています。その日は「話したくなったら教えてね」で終えて大丈夫です。翌日以降、学校の話でなくてかまわないので、ふつうの会話を続けてください。
Q. 父親(母親)がいつも強く言っていて、止められません
相手を責める形で話すと、夫婦の言い合いになりやすいです。「子どもの気持ちを先に聞く」の順番だけ、家で共有してみてください。二人だけで難しいときは、スクールカウンセラーなど第三者に入ってもらうのも方法の1つです。
まとめ
- 強く言うこと自体は悪くない。命や人としての言動ははっきり伝えていい
- 苦しくなるのは、逃げ道のない正論が続いたとき
- 翌日は、言い方を謝り、中身は残す
- 伝える前に、まず気持ちを聞く
- 「聞いてくれない」は、聞いてほしいの合図として受け取る
- 信頼は1回では戻らない。毎日聞くことを続ける
今日できる一歩は、明日の夕方に「昨日のこと、ちょっと話してもいい?」と声をかけることです。
強く言ってしまったことを夜に後悔できるのは、お子さんのことをちゃんと見ているからです。翌日に気持ちを聞く日が1日ずつ増えていくと、親子で話せる時間も少しずつ戻ってきます。











コメント