※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。公的制度の説明は各省庁・自治体の公式情報にもとづいています。
二学期が始まって、いちばん追い詰められるのは共働きのご家庭です。子どもは家にいる。仕事は待ってくれない。「私が辞めれば、この子は落ち着くのだろうか」——そう検索してこられた方に、先に正直なところをお伝えします。私は「辞めれば良くなる」とは言えません。
元小学校教員として15年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして学校現場にいます。働きながらお子さんを支えるご家庭も、働き方を変えたご家庭も、担任の立場で何軒も見てきました。この記事では私が現場で見たことと正直にわからないことを分けたうえで、仕事の前に決めたほうがいいことを書きます。なお私の現場は小学校です。中学・高校は事情が変わる部分があります。
まず正直に。「仕事を辞めれば良くなる」とは、私には言えません
不登校をきっかけに働き方を変えるご家庭は、たくさんあります。フルタイムからパートへ。あるいは転職先を探す。現場にいると、めずらしい選択ではまったくありません。
理由もよくわかります。一日中、家でひとりで留守番させるのは心配だからです。ましてや学校に行けていない。中学生・高校生ならまだしも、小学校の低学年・中学年ならなおさらそう思われるのは自然なことです。
でも「辞めたから良くなった」かどうかは、私は知りません
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
担任は、その年度が終われば子どもと離れます。働き方を変えたご家庭のその後を、何年も追いかけて確かめることはできません。だから私は「辞めた家の子は良くなった」とも「続けた家の子は苦しんだ」とも、どちらも言えません。データとして持っていないのです。
ネット上には「辞めるべき」「辞めなくていい」の両方の記事があります。読み比べて、余計に決められなくなった方も多いと思います。ただ、そこで断言している側の多くは、続きにサービスの案内が控えています。売るものがない立場で正直に言えば、この問いに一般解はありません。
そのうえで。私が何軒も、はっきりと見てきたことなら、ひとつあります。
先に崩れるのは、子どもより家庭のほうです
小学生が不登校になると、家庭の中が乱れます。たどる道筋は、どのご家庭も似ていました。
- 夫婦で考え方がそろわなくなる——「甘やかしだ」「そっとしておくべきだ」。まずここでずれる
- 仕事との距離感でもめる——誰が休むのか、誰が働き方を変えるのか。多くの場合、その話は母親のほうに寄っていく
- 疲れきった母親のケアを、父親ができない——本人に悪気はなくても、手が回らない。母親だけが消耗していく
この過程をたどって、家庭そのものが良くない方向に進んでいくご家庭を、何軒も見ました。不登校は、その子ひとりの問題としてではなく、家庭が元から抱えていたものを表に出す形で現れます。だからこそ、支援が必要なのだと現場では感じます。
裏を返せば、こうも言えます。仕事を辞めても、家庭内の荷物の偏りがそのままなら、消耗する人が変わらないだけです。母親が一日中家にいて、夫婦の考えはずれたままで、ケアする人が誰もいない。それは「解決」ではありません。
だから先に決めるのは、仕事ではなく「荷物の分け直し」です
辞めるか続けるかは、そのあとで決めても間に合います。先に紙に書き出してほしいのは、いま家の中にある「不登校まわりの仕事」を、誰が持っているかです。
| 家の中にある仕事 | 多くの家で持っている人 | 渡せる先 |
|---|---|---|
| 朝の「行く・行かない」の受け止め | 母親 | 週に何日かは父親が担当と決める |
| 学校への連絡・欠席の電話 | 母親 | 父親/メールや連絡アプリに切り替える |
| 日中の様子の確認 | 母親(仕事の合間) | 祖父母・親戚・地域の見守りなど外の大人 |
| 昼ごはん | 母親 | 前夜に一緒に決めておく/本人の担当にする |
| 勉強・進路の情報集め | 母親 | 父親に丸ごと移せる数少ない仕事 |
| 気持ちの引き受け(夜の話し相手) | 母親 | スクールカウンセラー・相談窓口 |
全部を渡す必要はありません。ひとつでも母親の欄から動けば、それだけで家の空気は変わります。そして、この分け直しは仕事を辞めなくてもできます。順番としては、こちらが先です。
母親側の消耗がすでに限界に近いと感じるときは、不登校の子を支える親が「しんどい」と感じたらもあわせて読んでみてください。
担任の側から見えていたこと——連絡が減ると、学校は不安になります
ここからは、学校の内側の話です。耳が痛い部分もあるかもしれませんが、隠さずに書きます。
先に言っておきます。これは「だから辞めてください」という話ではありません。生活があります。ひとり親のご家庭もあります。辞められる家だけが子どもを支えられるなら、支援という言葉に意味がありません。
ただ、学校側の見え方は知っておいて損がありません。いちばん学校が不安になるのは、仕事が忙しくて保護者との連絡が細くなっていくときです。担任の頭に浮かぶのは、こういうことです。
- この先、この家はどうなっていくんだろう
- いま、誰がこの子を支えているんだろう
連絡が途切れると、学校には家の中が一切見えなくなります。見えないものは、いい方向には想像されません。そして皮肉なことに、その不安は「もっと連絡しなければ」という形で保護者に返ってきます。
辞めなくてもできる、いちばん効くこと
働き方を変えるより先にできて、しかも効果が確実なのがこれです。連絡を細くていいから切らないこと。
- 頻度より定期——毎日でなくて構いません。「週明けにこちらから連絡します」と決めて、その通りにするほうが信頼されます
- 電話でなくていい——日中に電話に出られないなら、そう伝えて連絡帳・メール・アプリに切り替えてもらってかまいません
- 中身は短くていい——「今週は家で過ごしました。夜は眠れています」の二行で十分です。学校が知りたいのは、この子が誰かに見てもらえているかどうかです
家庭訪問や電話をどこまで受けるかで迷っている方は、不登校の家庭訪問・担任からの電話、断っていい?に、断り方と残しておく連絡の切り分けをまとめています。
日中ひとりの時間。学年で線を引く前に見ておきたい3つ
「何年生からひとりで留守番させていいか」という基準を探している方も多いと思います。学年はひとつの目安ですが、それより先に見てほしいものが3つあります。
- 本人が、ひとりを怖がっていないか——「ひとりのほうが気楽」と言う子と、「今日も一人なの」と言う子では、同じ留守番でも中身がまったく違います。ここは本人に直接聞いてください
- 夜、眠れているか——日中ひとりで過ごすことの負荷は、夜に出ます。寝つきと中途覚醒は、いちばん正直な指標です
- 一日に一度、人の声を浴びる時間があるか——不登校でいちばん怖いのは、社会とのつながりが細っていくことです。昼に一本電話が入る、夕方に習い事がある、祖父母が顔を出す。何でも構いません。一日ゼロの日が続かないようにするだけで、意味があります
3つめについては、家の外とのつながりの残し方を不登校でも習い事には行ける?にまとめました。
留守番中の時間を、家の学習にあてるなら
日中ひとりの時間をどう使うかで悩まれるなら、選択肢のひとつとして知っておいてほしい制度があります。家庭でのICT学習が、条件を満たせば学校の「出席扱い」として認められる仕組みが文部科学省から示されています。学習記録が残る形をとっておくと、学校との相談材料にもなります。仕事を続けながらでも進められる話なので、不登校でも「出席扱い」になる文科省の制度で手順を確認してみてください。
ただし、これは本人が勉強に向かえる状態にあるときの話です。順番を間違えないでください。
ここから先は、相談してください
次のようなことが二週間以上続いているときは、働き方の検討より先に相談を優先してください。
- 朝、布団から起き上がれない
- 夜中に何度も目が覚める
- 食欲が落ちている
- 以前は楽しめていたことを、楽しめない
- 留守番中に強い不安を訴える、家から一歩も出られない
相談先は、学校のスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口、小児科や児童精神科です。親御さんが一人で抱え込まないことが、結局その子のためになります。
それでも「辞める・減らす」を決めるときは、数字を先に見てください
ここまで、仕事より先にやることがある、と書いてきました。それでも、収入を減らす判断をする日は来るかもしれません。ひとりで抱えきれないと分かって決めるのなら、それは逃げではありません。
ただ、ひとつだけお願いがあります。気持ちだけで決めないでください。
「いくら減るのか」「いくらまでなら回るのか」を知らないまま辞めると、あとから来る不安が、形を変えて子どもに向かうことがあります。「あなたのために辞めたのに」——この一言だけは、言わせたくないのです。
順番はこうです。まず無料で使えるものを全部確認する。そのうえで、足りない見通しだけを埋める。
先に、無料で使える窓口から
意外と知られていないものから挙げます。
- 就学援助——学校教育法第19条にもとづき、経済的な理由で就学が難しいご家庭に、市区町村が学用品費や給食費などを補助する制度です。認定はご家庭の経済状況で判断されるもので、出席日数で決まるものではありません(ただし給食費のように実費への補助は、休んでいる間は対象外になることがあります)。認定基準も金額も自治体ごとに違うので、学校か教育委員会に「うちは対象になりますか」と直接聞くのがいちばん早いです
- 自治体の家計相談——生活困窮者自立支援制度のなかに、家計の状況を「見える化」して立て直しを一緒に考える家計改善支援事業があります。相談は無料で、秘密は守られます。ただし任意の事業のため、実施しているかは自治体によります。市区町村の福祉の窓口か、社会福祉協議会で確認してください
- ひとり親向けの手当——児童扶養手当など、申請しなければ受け取れないものがあります。窓口は同じく市区町村です
ここまでは、何かを売られる心配のない相談先です。まずここを使い切ってください。
「この先5年」の見通しだけが埋まらないとき
上にあげた窓口が見てくれるのは、主に「いまの家計」です。ただ不登校の場合、これまで想定していなかった費用が先に出てくることがあります。フリースクールの月謝、家庭教師、通信制高校の学費。進路の選択肢を増やそうとするほど、お金の話になります。
「働き方を変えたとして、この子の進路にかかるお金まで足りるのか」。そこまで数字にしたい方には、ファイナンシャルプランナー(FP)に家計とライフプランを見てもらうという選択肢があります。
ここは正直に書きます。私はお金の専門家ではありません。心の見立てはできますが、家計の設計はできません。お金の相談はお金の専門家に、心の相談は心の専門家に。分けたほうが、どちらの答えも確かになります。
そのうえで、無料のFP相談を使うなら、知っておいてほしいことが2つあります。
- なぜ無料なのか——多くの無料FP相談は、保険や資産運用といった商品の提案が収益につながる仕組みで成り立っています。それ自体が悪いわけではありませんが、知らずに行くのと知って行くのとでは大違いです。「今日は契約はしません。数字を出してもらうだけです」と最初に伝えてかまいません。それで気を悪くする相手なら、任せなくて正解です
- それなりに手間はかかる——オンラインで、カメラとマイクをオンにして話す形式です。いまはそんな気力がない、と思われたなら、無理に使う必要はありません。上の無料窓口だけでも、十分に前へ進めます
※FPは家計とライフプランの専門家です。お子さんの状態についての相談先ではありません。心のことは、ひとつ前の項目に書いた窓口へ。
まとめ
- 不登校をきっかけに働き方を変える家庭は多い。ただし「辞めたから良くなった」かどうかは、現場の人間にも正直わからない
- 確かなのは、先に崩れるのは子どもより家庭のほうだということ(夫婦のずれ→仕事との距離感→母親だけの消耗)
- だから先に決めるのは仕事ではなく、母親ひとりに寄っている荷物の分け直し。ひとつ動かすだけで家の空気は変わる
- 学校がいちばん不安になるのは、忙しさで連絡が細くなっていくとき。辞めなくてもできて、いちばん効くのは「細くても切らない」こと
- 留守番の可否は学年より、本人が怖がっていないか・夜眠れているか・一日に一度は人の声があるかで見る
- それでも辞める・減らすと決めるときは、就学援助や自治体の家計相談など無料の窓口を先に使い切ってから、足りない見通しだけを専門家に埋めてもらう
今日できる一歩は、これだけです。紙を一枚出して、いま自分が持っている「不登校まわりの仕事」を書き出してみてください。そして、そのうち一つだけ、誰かに渡す相談をしてみる。仕事を辞めるかどうかの答えは、それからでも遅くありません。
働き続けている親御さんが、子どもを大事にしていないなどということは、まったくありません。日中そばにいられない日にも、その子は「帰ってくる人がいる家」で待っています。それは、思っている以上に大きなものです。











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