不登校の子の宿題、やらせる?やらせない?〜元教員・公認心理師が教える「出さなくていい宿題」の見分け方と担任への頼み方〜


夏休みも後半に入ると、部屋の隅に手つかずのドリルが積まれたまま、という状態になりがちです。学校を休んでいる間の宿題、長期休みの宿題。「やらせるべきか、やらせないべきか」で、親御さんの気持ちが毎日ゆれます。

保護者

宿題が全然進んでいなくて…。声をかけると機嫌が悪くなるし、かといって放っておくのも不安です。
先生

全部やるか、全部やめるか——その二択で考えなくて大丈夫です。宿題は仕分けできます。

元小学校教員として15年、今はスクールカウンセラーとして学校現場にいる立場から、この記事では宿題を「手放す・減らす・残す」に仕分ける基準と、担任の先生にそのまま使える頼み方をまとめます。精神論ではなく、今日から動かせる話だけにしました。

結論:宿題は3つに仕分ければいい

  1. 手放していいもの(やらなくても、あとで困らない)
  2. 減らして「形」だけ残すもの(出したという事実が、本人の支えになる)
  3. やっておくと後で効くもの(1日5分で十分)

親が全部を1つの山として見ているうちは、量に押しつぶされます。仕分けた瞬間に、たいてい「これは今やらなくていい」が半分以上を占めます。

そもそも、なぜ宿題だけがこんなに重いのか

学校を休んでいる子にとって、宿題は「できていない自分」を毎日目で確認させられるものになりがちです。手をつけない理由は、だいたいこの3つに分かれます。

  • 内容が分からない——休んだ範囲が入っていて、開いた瞬間に手が止まる
  • 心の余力がない——休むこと自体にエネルギーを使っている時期がある
  • やる意味を感じられない——学校に行っていないのに、なぜ、という気持ち

そして正直に言えば、親御さんが焦るのも当然です。子どもの回復は目に見えませんが、宿題は「残り何ページ」と数えられてしまうからです。数えられるものだけが、不安の受け皿になります。宿題の山にイライラしている自分を、責めなくて大丈夫です。

宿題を3つに仕分ける(そのまま使える表)

仕分け見分け方よくある例
① 手放す量をこなすことが目的/親子ゲンカの原因になっているドリルの全ページ、自由研究、ポスター・標語などの応募作品、絵日記の全日分
② 減らして形を残す本人が「まったく出さないのは嫌だ」と感じているもの日記は3日分だけ、漢字は1日1行、読書感想文は「本を1冊読んだ」で可にしてもらう
③ 残す積み上がる教科。抜けると二学期の授業がさらにつらくなる四則計算、漢字の読み(書きは後回しでいい)。1日5分でいい

迷ったときの判定はひとつだけです。「これをやらせて、親子の関係が悪くなるか」。悪くなるなら①へ回してください。関係が壊れると、宿題どころか次の一歩がまるごと止まります。そこが、この時期にいちばん失ってはいけないものです。

正直に言うと、学校は「全員が全部そろう」とは思っていません

私の経験の範囲でお伝えすると、担任は始業式の朝に全員が全部の宿題を持ってくる前提では動いていません。体調を崩した子、家庭の事情がある子、単純に間に合わなかった子——どのクラスにも毎年います。

先生

学校側がいちばん困るのは、宿題が出ないことではなく、連絡がないまま当日を迎えることです。

ただし、提出物の扱いは学校差・担任差がとても大きいのも事実です。「やらなくて大丈夫だろう」と家庭だけで判断するのではなく、ひと言相談しておくのがいちばん安全で、いちばん早い。相談があれば、学校側も声のかけ方や提出の扱いを調整できます。

担任にどう頼む? そのまま使える言い方

場面そのまま言える例
まず全体を相談する「宿題のことでご相談です。今は机に向かうのが難しい状態で、全部は難しそうです。出せる範囲だけにさせていただくことはできますか」
提出日を延ばしたい「二学期に入って落ち着いてから、少しずつ提出させてもよろしいでしょうか」
一部だけ外したい「計算ドリルは進められそうですが、読書感想文と自由研究は難しそうです。無理のない形にできますか」
本人に触れないでほしい「宿題の件は、しばらく本人には直接ふれないでいただけると助かります」

コツは、「できません」ではなく「ここまでならできます」と伝えることです。学校は「できない」だけだと動きようがありませんが、できる範囲が分かれば、そこに合わせた形を用意できます。電話が気重なら、連絡帳の一行でも構いません。

「宿題が終わってないから行けない」と言い出したら

この言葉が出たとき、それは登校を拒否しているのではなく、行きたい気持ちがあるサインのことがあります。行く気がなければ、宿題は理由になりません。

だとすれば、親がやることは説得ではなく障害物を減らす交渉です。担任に「一部免除」「提出日の変更」を相談して、「これだけ持って行けばいい」という状態にする。それだけで足が動くことがあります。

逆に、間に合わせるために親が横について詰め込むのは、多くの場合うまくいきません。行きしぶりの子は「学校に行く理由(=いいこと)」を見失っている状態です。そこに宿題という負荷を足すのは、修行に送り出すのと同じになってしまいます。

やった分を「記録」に残しておくと、後で効きます

取り組んだノート、使った教材の学習履歴、作品の写真。こうした学習の記録は、二学期に担任と話し合うときの材料になります。「何もしていなかったわけではない」と伝わるだけで、学校側の対応の幅は変わります。

また、自宅学習が一定の要件を満たすと「出席扱い」として認められる文部科学省の制度があります。最終的に判断するのは在籍校の校長で、要件や運用は自治体・学校によって異なりますが、記録を残しておくと相談の入り口に立ちやすくなります。制度の中身は別記事にまとめました。

よくある質問

Q. 答えを写してでも出させるべき?
目的によります。「提出した」という事実が本人の気持ちを軽くするなら、写して出すことに意味がある場合もあります。ただし、親が徹夜で仕上げるのはおすすめしません。誰のための宿題か分からなくなり、来年また同じ日が来ます。

Q. 自由研究や読書感想文が重すぎます
最初に手放していい枠です。応募作品や自由課題は任意提出の扱いになっていることもあります(学校によります)。担任に確認するだけで、消える宿題は意外とあります。

Q. やらないと成績に響きますか?
提出物の反映のしかたは学校によって違うので、担任に確認してください。そのうえで申し上げると、小学校の段階では成績よりも「学校とのつながりが切れないこと」を優先していい場面が多いと感じています。

Q. 「兄弟はやっているのに」と言われます
家庭の中で基準を分けて構いません。同じ量の宿題が、同じ負荷とは限らないからです。上のお子さんには「今はこういう時期だから」と、理由を短く伝えておくと落ち着きます。

なお、朝、布団から起き上がれない/夜中に何度も目が覚める/食欲が落ちた/以前は楽しめていたことを楽しめない——こうした状態が2週間以上続くときは、宿題より先にスクールカウンセラーや小児科・児童精神科にご相談ください。やる気の問題に見えて、体調が背景にあることがあります。

まとめ:減らせる宿題は、必ずあります

  • 宿題は「手放す・減らして形を残す・残す」の3つに仕分ける
  • 迷ったら「親子の関係が悪くなるか」で決めていい
  • 残すのは計算と漢字の読み、1日5分で十分
  • 学校がいちばん困るのは、宿題が出ないことより連絡がないこと
  • 頼み方は「できません」ではなく「ここまでならできます」

今日できる一歩は、宿題の山を親が3つに分けてみることです。子どもに聞かなくて構いません。分けてみると、「今やらなくていいもの」がかなりの割合を占めているはずです。減らしたあとの小さな山なら、子どもが自分から手を伸ばせる日が来ます。


教育
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