「なんで行きたくないの?」と聞いても、子どもは黙ったまま。かと思えば、昨日と今日でちがう理由を言う。——登校しぶりで本当に困るのは、行けないことより「理由がわからないこと」だったりします。
原因さえわかれば手を打てるのに。そう思って聞き出そうとするほど、子どもは口を閉じていく。この記事は、その袋小路に入っている方に向けて書きます。
この記事でわかること
- 担任として「原因」を確認しにいったのに、何も出てこなかった実話
- 登校しぶりで原因探しをすすめない3つの理由
- スクールカウンセラーに言われた「冬眠」という見方
- 原因を探すかわりに、家で見ておく3つのところ
- 待っていい登校しぶりと、早めに相談したい登校しぶりの分かれ目
執筆・監修:元小学校教員(約20年)/公認心理師・現役スクールカウンセラー。
結論|登校しぶりの理由は、本人にもわからないことがあります
先に結論を書きます。登校しぶりや不登校の理由でいちばん多いのは、「なんとなく」です。
これは、子どもが隠しているという意味ではありません。本人の中でも言葉になっていない、というのが実感に近いです。体が重い、気持ちが上がらない、行く理由が見当たらない。それを子どもの語彙で説明するのは、大人が思うよりずっと難しいことです。
だから「理由が言えない=深刻な何かを隠している」とは限りません。まずそこを、いったん外してみてください。
「あの子に嫌なことを言われる」——確認しても、何も出てきませんでした
担任をしていたときの話です。冬(12月〜2月)のことでした。
前日まで、大きなトラブルもなく元気に過ごしていた子がいました。昨日も笑顔で「さようなら」と帰っていった。その翌朝、保護者から連絡が入ります。
「どうやらB君に嫌なことを言われるみたいで、学校行きたくないと言っているので今日は休ませます。」
「えっ、B君にですか!?」というのが正直な反応でした。毎日見ていて、そんな様子はまったくなかったからです。
でも、こちらの見えていないところで何かあったのかもしれない。そう思って、いつも一緒にいるC君に軽い調子で話しかけ、事実を確かめました。何かあったふうではない。名前の挙がったB君にも聞きましたが、悩んでいる様子も、そういう会話もなかったといいます。
聞き取った結果は、トラブルなし。原因は、どこにもありませんでした。
原因探しをすすめない3つの理由
①聞かれた子は、答えを作ってしまうから
「どうしたの?」「学校で何か嫌なことあったの?」と聞かれると、子どもは答えなければいけない状況に置かれます。
そうすると、最近あったちょっとした嫌なことを、あたかも100%の理由であるかのように言う子がいます。本人にウソをつく気はありません。差し出せる材料がそれしかなかった、というだけです。
②ずれた「原因」に手を打つと、対策も全部ずれるから
いったん理由が出てくると、家も学校もそこに向けて動き出します。席を離す、声をかける、様子を見る。悪いことではありません。
ただ、それが本当の原因でなかった場合、手を尽くしても状況は変わりません。そして変わらないことで、親も子も「やっぱりもっと深刻な何かがあるのでは」と不安を重ねていきます。
③名前の挙がった子にも、話を聞くことになるから
ここは担任側の本音として、正直に書いておきます。誰かの名前が挙がった時点で、学校はその子にも事実を確かめます。そうしないと確認になりません。
結果として「何もなかった」とわかっても、聞かれた側の子には、聞かれたという感触が残ります。子ども同士の関係を守るという意味でも、名前を出すのは確かめたい材料が本当にあるときだけにしたほうがいい、というのが現場にいた者の実感です。
スクールカウンセラーに言われた「それは冬眠だね」
さきほどの子は、その後もちょっと登校して早退したり、一日行けた次の日は欠席したり、という状態がしばらく続きました。どうしたものかと思っていたときに、スクールカウンセラーが来る日がありました。
どう進めるのがよいか相談すると、返ってきたのは意外な一言でした。
「それは冬眠だね。」
冬眠って。正直、まじか、と思いました。
ただ続きを聞いて、妙に納得したのです。「動物だって今はそんな時期でしょ。大人だって朝、布団から出たくないしね」。そして「暖かくなったら登校できると思うよ」と。
言われたとおり、3月になると、その子は再び以前のように毎日登校できるようになりました。
もちろん、特定の原因がある場合もあります。すべてが冬眠だと言うつもりはありません。ただ、探しても原因が出てこないときは、「今はそういう時期」というパターンが実際にある——このことを知っているだけで、親の焦り方はかなり変わります。
原因を探すかわりに、家で見ておく3つのところ
原因探しをやめると、手持ち無沙汰になります。かわりに見るのはこの3つです。
| 見るところ | やめること | かわりにやること |
|---|---|---|
| 親の顔つき | 心配を子どもに全部見せる | これまで通りの生活を続ける。親が動じないほど、子どもは落ち着くのが早い |
| 友だちとの線 | 「友だちに会うのも無理でしょ」と決めつける | 放課後に遊ぶ、家に来てもらうなど、学校とは別ルートで会える機会を1つ残す |
| 学校に行く理由 | 「行くのが当たり前」で押す | 本人が楽しみにできることを1つ探す(給食・係・好きな授業でも可) |
とくに1つめが効きます。子どもは、休んでいること自体にすでに罪悪感を持っています。そこに親の不安が乗ると、罪悪感が二重になる。「これまで通り過ごしている家」の子ほど、落ち着くのが早いというのが現場での実感です。
そして2つめ。行きしぶりの子に対して、家族や先生の言葉より圧倒的に強いのは友だちの力です。学校に行く理由をどう足していくかは、行ったり休んだりが続いている場合に特に大事になるので、五月雨登校の子にどう関わる?──「登校する理由」の作り方にまとめてあります。
それから、これは待つ側の話です。原因探しをやめると、親のほうに時間と迷いが残ります。その時間を、子どもを問い詰めることではなく親自身が理解を深めることに使うと、待ち方が変わります。同じ状態を経験した親や専門家の言葉に触れておくと、「今は待っていい時期だ」と自分で判断できるようになるからです。手元に1冊置いておくものとして、不登校の子を育てる親に読んでほしいおすすめ本11選にまとめています。
なお、聞き方そのものを変えたい場合は不登校の子への「声かけ」効いた言葉・逆効果な言葉を、「うちだけなのでは」という気持ちが強いときは登校しぶり・不登校あるある事例3選を読んでみてください。
待っていい登校しぶりと、早めに相談したい登校しぶり
「冬眠」として待っていい状態と、そうでない状態があります。分かれ目は、気持ちではなく体に出ているかどうかで見てください。
| 待ちながら様子を見ていい | 早めに相談したい |
|---|---|
| 休んだ日は元気に過ごせている | 朝、布団から起き上がれない |
| 好きなこと・遊びは楽しめている | 以前は楽しめていたことを楽しめない |
| 眠れている・食べられている | 夜中に目が覚める/食欲が落ちている |
右側にあてはまるものがあれば、待つ段階ではありません。学校のスクールカウンセラー、または小児科や児童精神科など、体のことも見てもらえる相談先につないでください。学校のカウンセラーへの相談は、担任を通さず直接申し込める学校も多いです。
逆に、左側の状態で「行きたくないけど、学校に楽しみもある」という子であれば、相談しながら少しずつ頑張ってみるのもよい時期です。
まとめ|今日できる小さな一歩
- 登校しぶりの理由でいちばん多いのは「なんとなく」。言えないのは隠しているからとは限らない
- 問い詰めると、子どもは答えを作る。ずれた原因に手を打つと、対策も空振りする
- 名前を出すと、その子にも聞き取りが及ぶ。出すのは材料があるときだけに
- 探しても出てこないときは「今はそういう時期」というパターンがある(実際に3月に戻った子がいます)
- 見るのは、親の顔つき・友だちとの線・学校に行く理由の3つ
- ただし体にサインが出ていたら、待たずに相談する
今日できる一歩は、たぶんこれです。今夜、理由を聞くのを一回だけやめてみる。かわりに、学校と関係のない話を一つして、いつも通りに「おやすみ」と言う。それだけで、子どもの側の緊張は少し下がります。
最悪を想定しておくのは、親として当然です。そのうえで、待ち方だけは楽観的でいてください。暖かくなるのを待つ、というのは何もしていないことではありません。いちばん効く手当てが「待つこと」である時期は、確かにあります。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。一人で悩まないで、ともに悩みましょう。
Twitter、Facebook、 YouTubeもやっています!
Twitter@educationsuppo
Facebook:Education support place
YouTube:Education support place
コメント