小学生の忘れ物が多いと、毎朝「また?」と言いたくなります。叱っても減らないなら、叱る以外の手に切り替える時期かもしれません。私は、忘れ物の数より「どこでつまずいているか」を先に見るようにしています。
前の晩に一緒にそろえたのに、玄関に置いたまま出ていく。「どうして持っていかないの」と言った自分の声が、夜になって頭に残っている方もいると思います。
元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして保護者の相談を受けています。忘れ物が多い子と、その子を毎朝叱って疲れている保護者の両方に、担任として関わってきました。
小学生の忘れ物が多いとき、まず見る3つの様子
忘れ物は、お子さんの性格や、親の育て方のせいではありません。先に見るのは「どこで抜けているか」です。抜けている場所によって、効く手が変わります。
| お子さんの様子 | 考えられること | 親が今日すること |
|---|---|---|
| 持ち物を書いていない 連絡帳が空欄。「先生が言ってた」で済ませる | 書かないので、家で思い出せない | 持ち物を書く場所を一緒に決める |
| 用意はしたのに持っていかない 玄関に置いたまま。学校に置いてくる | 意識がほかのことに向きやすい | 目に入る場所に、持ち物を貼る |
| 一緒にやっても翌日また忘れる 叱っても何週間も減らない | 本人の努力だけでは難しいのかもしれない | 親が準備に入り、担任に様子を聞く |
どれに近いかを決めるだけで、明日やることがしぼれます。
忘れ物を性格のせいにしない
「だらしない」「やる気がない」と見えても、教室で見ていると理由は別のところにあります。多いのは、意識があちこちに行きやすい子です。朝の支度の途中で、ほかのことが目に入ると持ち物のことが頭から抜けます。
もう1つ多いのが、書くのを嫌がる子です。連絡帳に書かないので、家に帰ると何を持っていくのか思い出せません。書かないので思い出せず、思い出せないので忘れます。
叱って減らないなら次の手に変える
叱って忘れ物が減る子は、私の体感では、最初から叱らなくても減る子です。何週間も叱っていて減らないなら、叱るのはもう効いていません。
私は、叱るのをやめて次の手を一緒に考えるほうが、お子さんの意欲につながると考えています。親が声を荒げる回数が減るだけでも、朝の空気が変わります。
教室で効いた「見える化」3つ
担任として効いたのは、持ち物を「頭で覚える」から「目で見る」に変えることでした。覚えておく力に頼らないので、意識がそれやすい子にも効きます。
毎朝通る場所に貼る
持ち物を紙に書き出して、毎朝必ず行く場所に貼ります。トイレのドア、洗面所の鏡、玄関の扉の内側です。歯みがきをしながら目に入るので、忘れにくくなります。
曜日ごとに変わる体操服や絵の具セットは、太い字で大きく書きます。
靴の中に紙を丸めて入れる
玄関まで来て、置いていくお子さんに効いた工夫があります。「体操服」と書いた紙を丸めて、毎日はく靴の中に入れておきます。靴をはこうとして紙に気づくので、玄関で思い出せます。
「玄関で置いていく」タイプの子には、貼るより効きました。
本人が大きな紙に書く
書くのを嫌がる子には、連絡帳でなくてかまいません。大きな画用紙やチラシの裏に、太いペンで持ち物を書かせます。小さな欄に細かく書くのが嫌な子でも、大きな紙なら書けることがあります。
書いたものを、上の「貼る」「靴に入れる」に回します。どこかに必ず書く、が先です。見える化は、書いたあとに足します。
「手伝う」か「任せる」かの決め方
手伝いすぎもよくない、放っておくのもよくない。両方言われて、動けなくなっている方が多いと思います。私は「学年」でなく「お子さんの様子」で決めています。
学年で線を引かない
「もう3年生だから自分で」と学年で決めるのは、現場の感覚とは合いません。1年生でも任せられる子はいますし、6年生でもまだ手を離さないほうがいい子はいます。
学年で手を離してしまった子は、中学生になっても困ることがあります。手を離す時期は、次の3つで見てください。
任せていい3つのしるし
次の3つがそろってきたら、少しずつ任せていけます。
- 1週間、忘れ物をせずに過ごせた
- 明日の予定を、自分で言える
- 朝と帰りの流れが、だいたい決まっている
3つに共通するのは、自分で自分を動かせていることです。失敗したあとに「次はこうしてみる」と考えられる子は、どんどん任せて大丈夫です。
低学年は親が準備していい
低学年のうちは、親が準備に入ってかまいません。甘やかしではなく、やり方を見せている時期です。
一緒に準備しながら、「明日は何がいるんだっけ」と本人に言わせます。言わせてから一緒に入れるほうが、手を離す時期が早く来ます。
担任の「たまに手伝って」の意味
連絡帳に「たまにおうちの方にも見ていただけると助かります」と書かれることがあります。担任のこの言い方は、「まだ手を離さないでほしい」の合図のことが多いです。
担任は、同じ学年の子を毎日見ています。「この子は、家の手がもう少しあったほうがいい」と感じていても、はっきりとは書きにくいのが本音です。(保護者との関係をこじらせたくないからです。)やんわりした言葉を受け取ったら、親が準備に入る時期だと読んでください。
迷ったら、担任に聞いてしまうのが早いです。「忘れ物が続いていて、家でも気になっています。学校ではどんな様子ですか?」と伝えてみてください。
忘れた日は作戦会議にする
忘れ物をした日は、叱る日でなく、次の作戦を決める日にします。本人が困った直後が、いちばん作戦を考えやすい時間です。
「どうしたら忘れなかった?」と聞く
帰ってきたら、「今日、体操服どうだった?」と軽く聞きます。本人が「忘れた」と言ったら、「どうしたら忘れなかったと思う?」と続けます。
「靴に紙を入れとく」でも、「ランドセルの横に置く」でもかまいません。本人が言った案を、その日のうちに試します。失敗のあとに次の手を自分で考えた子は、少しずつ変わります。
届けるかどうかは先に決める
忘れ物を学校に届けるかどうかは、その朝に迷わず済むように、先に決めておきます。私なら、給食のエプロンや薬など、本人や周りが困るものだけ届けます。それ以外は、届けません。
届けない日のために、担任に「忘れたときは本人に任せて大丈夫です」と伝えておくと安心です。学校での貸し出しや対応は学校によって違うので、担任に聞いておいてください。
毎朝の「また?」に疲れた親へ
朝の支度、連絡帳のチェック、帰ってからの確認。小さなことの積み重ねで、親のほうが先に疲れます。
イライラするのは親が悪いからではない
「また?」と言ってしまうのは、親が冷たいからではありません。毎朝のことで、気持ちの余裕がなくなっているだけです。
私がよく聞くのは、「何のために、親がここまで疲れてやらせているのか」です。子どものためなら、見える化と作戦会議で、叱る回数を減らしてかまいません。親の責任感のためなら、疲れ果てるまで続けなくて大丈夫です。
親の疲れやいらだちは、子どもに伝わります。忘れ物をした子は、もう十分に困っています。そこに親の不安が重なると、「自分のせいで親が疲れている」と感じやすくなります。
忘れ物の対応で消耗しきっていると感じたら、不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらも読んでみてください。学校に行けている子の親にも、同じ限界のサインがあります。
発達が気になるときの相談先
見える化や作戦会議を2〜3か月続けても減らないとき、発達の特性が背景にあることもあります。意識があちこちに行きやすい、不注意が強いタイプ(ADHDなど)です。
ただし、忘れ物が多いだけで決めつけないでください。診断は医師の仕事で、私が記事の中で判断できることではありません。気になるときは、次の順で相談してみてください。
- 担任に、授業中や休み時間の様子を聞く
- スクールカウンセラーに、家と学校の様子を合わせて相談する
- 必要なら、小児科や自治体の発達相談につないでもらう
相談に進んでも、見える化の工夫は続けて大丈夫です。
よくある質問
Q. 高学年なのに忘れ物が多いのは、手伝いすぎたせいですか
手伝いすぎたせいとは限りません。高学年で自分のことをやりきれない子は、学習面でも何か困りごとを抱えていることがあります。手を引くより、担任に様子を聞いて、いま必要な手助けを一緒に考えてください。
Q. 忘れ物が多いのは病気ですか
忘れ物の多さだけで、病気かどうかは決まりません。何か月も減らず、授業中の様子も気になるなら、担任やスクールカウンセラーに相談してください。
Q. 男の子だから忘れ物が多いのでしょうか
性別で決まるものではありません。私が見てきた中でも、忘れ物が多い子は男女どちらにもいました。性別より、「書いているか」「意識がそれやすいか」で見るほうが、次の手につながります。
まとめ
- 忘れ物は、性格や育て方のせいにしない。抜けている場所を見る
- 叱って減らないなら、叱るのをやめて次の手に変える
- 効いたのは、鏡・玄関の扉・靴の中の「見える化」
- 手伝うか任せるかは、学年でなく3つのしるしで決める
- 担任の「たまに手伝って」は、まだ手を離さないでの合図
- 忘れた日は、叱る日でなく作戦会議の日にする
今日できる一歩は、明日の持ち物を紙に1枚書いて、洗面所の鏡に貼ることです。
忘れ物が多い子は、叱られる回数も多い子です。叱る回数が減って、作戦を一緒に考える時間に変わると、朝の親子の顔が少しずつ変わっていきます。
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