小学生の行き渋りは、家の中だけで解決しようとしないほうが親も子も楽になります。朝の玄関で毎日がんばっている方ほど、学校と役割を分けてほしいと私は考えています。
毎朝の「行きたくない」に付き合ううちに、仕事に遅れてイライラする。夜はひとりで落ち込む。行き渋りが続く家では、子どもより先に親が疲れ果てていくことがあります。
元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして学校で相談を受けています。担任のころは、行き渋りの子を校門で迎える側にいました。
私の現場は小学校です。中学生になると事情が変わりますので、小学生の親御さん向けとして読んでください。
小学生の行き渋りは「イヤの大きさ」で見る
行き渋りへの動き方は、子どもの「イヤ」がどのくらいの大きさかで変わります。目安は次の4つです。
| 朝の様子 | イヤの大きさ | 親がすること |
|---|---|---|
| ぐずるが、家を出れば行ける | 小さい | 担任に学校での様子を聞く |
| 付き添えば行ける・遅れて行く | 中くらい | 担任と朝の受け入れ方を相談する |
| 途中で帰る・休む日が出てきた | 大きい | 休む日を認め、学校とつながる形を残す |
| 体の不調が2週間ほど続く | 体が限界 | 小児科やスクールカウンセラーに相談する |
どの段階でも、最初の一手は同じです。担任に学校での様子を聞くところから始めます。
イヤが小さいうちほど、家と学校で打てる手が多く残っています。「まだ行けているから大丈夫」と様子を見るより、行けているうちに動くほうが楽です。
行き渋りは積み重ねがあふれた合図
行き渋りは、ある日突然始まったように見えます。ただ、私の見てきた子の多くは、小さな「イヤ」を少しずつためていました。
コップの水があふれる前
友だちとの関わり、勉強の理解度、担任との関係。いくつもの小さなイヤが、1年生のころから少しずつたまっていきます。
コップの水があふれたとき、イヤが「行きたくない」の言葉になって出てきます。行き渋りは、コップがいっぱいに近づいている合図だと私は受け取っています。
あふれる前なら、イヤを1つ減らすだけで水位が下がることもあります。「これならできそう」と子どもが見通しをもてる状態を、家と担任でつくっていきます。
理由を問い詰めない
「何がイヤなの?」と毎朝聞いても、答えが返ってこないことは多いです。本人にもうまく言葉にできないからです。
問い詰めるほど、子どもは「理由を言えない自分が悪い」と感じます。理由を言わない子への向き合い方は登校しぶりで理由を言わないときにまとめました。
最初の一手は担任に様子を聞く
家で理由を探すより先に、担任に学校での様子を聞いてください。家で見えている姿は、お子さんの一部にすぎません。
そのまま使える聞き方
連絡帳や電話で、次のように聞いてみてください。
- 「最近うちの子、学校で変わった様子はありませんか?」
- 「朝に行きたくないと言うことが増えていて。休み時間はどう過ごしていますか?」
- 「授業中、わからなくて困っている様子はありませんか?」
(責める形にならないよう、あくまでも近況の相談として。)担任も、家での様子を聞けると次の手を考えやすくなります。
聞いたあとの見立て方
担任の答えによって、次に見る場所が変わります。
| 担任の答え | 次に見ること |
|---|---|
| 友だちとのトラブルに心当たりがある | 担任に間に入ってもらう |
| 授業でつまずいている様子がある | つまずいている単元を担任に聞いて、家で復習する |
| 休み時間にひとりでいることが多い | 学校に会いたい友だちがいるかを見る |
| とくに思い当たることがない | ほかの困り感がないか、家と学校で探し続ける |
担任に思い当たることがないときは、子どもの困り感がほかの場所にあるのかもしれません。私が担任だったころも、覚えのないできごとを子どもが理由に挙げたときは、ほかの理由を探していました。
勉強のつまずきが見つかったら、つまずいた単元から順に復習します。家で教えるのがつらいときは、第三者に依頼するのも1つの方法です。
学校へ行く理由を増やす
行き渋りの子は、学校へ行く理由(学校でのいいこと)が減ってきていることが多いです。授業がわからない、友だちがいない、と行く理由が減っていきます。
いちばん強いのは友だちの力
担任をしていて、友だちの力は家族や先生より強いと感じてきました。「あの子に会えるから行く」は、子どもにとって十分な理由になります。
担任に「仲のいい友だちと話せる時間をつくってもらえませんか」と頼んでみてください。席や班、休み時間の遊びなど、学校側で工夫できることはあります。
放課後に友だちと遊ぶ時間も、行く理由の1つになります。低学年は子どもだけで約束するのが難しいので、大人が間に入ってください。
無理に連れて行かない
行く理由がない学校へ無理やり連れて行くのは、子どもにとって「修行してこい」と言われているのと同じです。親子の関係にも、後まで跡が残ることがあります。
行かせるか休ませるかで迷う朝の判断は、不登校で無理やり行かせるのは?に書きました。
付き添いで親が限界のとき
毎朝の付き添いで親が疲れ切っているなら、親の負担を減らすことを先に考えてください。親が倒れてしまうと、子どもを支える人がいなくなります。
親の不安は子に伝わる
子どもは、親を困らせていることに罪悪感をもっています。親が不安な顔を見せるほど、子どもの罪悪感は強くなります。
家ではなるべく、これまで通りに過ごしてください。朝がつらくても、帰ってきたあとの時間はいつも通りでいいのです。
親が平気なふりを続ける必要はありません。子どもの前では落ち着いて、本音は別の場所で話す、と分けて考えてみてください。
家の中が乱れていく前に
行き渋りや不登校は、子どもだけの問題では終わりません。夫婦の考え方の違い、仕事との両立、疲れた親をもう一方が支えられない。家庭全体がしんどい方向に進むのを、私は何軒も見てきました。
働き方に迷っている方は不登校で親は仕事を辞めるべき?も読んでみてください。
本音を話せる場所をもつ
保護者が本音を話せる場所があることは、結果として子どものためになります。スクールカウンセラーは、子どもだけでなく保護者の相談も受けています。
「朝のことで、私自身が参ってしまっていて」と担任に伝えれば、スクールカウンセラーにつないでもらえます。自分の疲れが限界に近いか、限界サインを確かめてみてください。不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらにまとめています。
受診を考えるサイン
次の4つが2週間ほど続くときは、家と学校の工夫だけでは足りないかもしれません。
- 朝、布団から起きられない
- 夜中に何度も目が覚める
- 食欲が落ちている
- 前は楽しめたことを楽しめない
小児科やスクールカウンセラーに相談してください。いじめが疑われる場合は、2週間を待たずに学校へ相談してください。
よくある質問
Q. 行き渋りは甘えですか
甘えではないと私は考えています。行く理由が減ってきている状態で、子どもなりに困っているサインです。
甘えかどうかを決めるより、何に困っているのかを担任と一緒に探すほうが先です。
Q. 行き渋りはいつまで続きますか
決まった期間はありません。昨日は行けたのに今日は行けない日も、普通にあります。
私は「最悪を想定して、楽観的に待つ」くらいの構えを勧めています。行けた日を喜びすぎず、行けない日も責めずに過ごしてください。
Q. 仕事があって付き添いを続けられません
付き添いができないことを、自分のせいだと責めなくて大丈夫です。担任に「朝の付き添いが続けられない」と正直に伝えてください。
朝の受け入れ方を学校側で工夫できることもあります。ひとりで抱えず、学校と一緒に考える場にしてください。
Q. 休ませたら、そのまま行けなくなりませんか
休ませたから行けなくなる、とは限りません。体の不調が続いている子に無理をさせるほうが、負担は大きくなります。
休む日も、担任と連絡を取り合っておくと、学校とのつながりが途切れにくくなります。
まとめ
- 小学生の行き渋りは、「イヤ」の大きさで動き方を変える
- 行き渋りは、小さなイヤの積み重ねがあふれかけている合図
- 最初の一手は、担任に学校での様子を聞くこと
- 友だちの力を借りて、学校へ行く理由を増やす
- 親が限界なら、本音を話せる場所を先に確保する
今日できる一歩は、担任に「最近うちの子、学校で変わった様子はありませんか?」と聞いてみることです。
イヤが小さいうちに気づけたこと自体が、お子さんにとって大きな助けになっています。朝の玄関で毎日向き合ってきたあなたなら、学校と一緒に次の手を探していけます。











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