「学校に行けなくなって1か月。担任の先生から、電話が2回あっただけ」
「相談しても『様子を見ましょう』ばかりで、何も進まない」
そう感じている保護者の方に、まずお伝えしたいことがあります。それは気のせいでも、わがままでもありません。実際に、担任が動けていないことはあります。
この記事でわかること
- 担任が「何もしない」ように見える、学校側の3つの事情
- 担任のタイプ別・親の打ち手(早見表)
- 担任に頼むのは、この3つだけでいい(そのまま使える言い方つき)
- 担任と合わないときの、相談先をたどる順番
執筆・監修:元小学校教員(15年)/公認心理師・現役スクールカウンセラー。
元教員が明かす|担任が動けない3つの理由
先に結論だけ書きます。多くの場合、担任はやる気がないのではなく、経験と裁量がないのです。順に説明します。
① 不登校の子を担任した経験のある先生は、思っているより少ない
僕自身、15年間の教員生活で、不登校の子を担任したのは一度だけです。ベテランの先生でも、赴任した学校で担任していなければ、不登校の子と深く関わる機会はほとんどありません。
つまり多くの担任にとって、お子さんは「はじめて出会う不登校の子」です。どんな声をかければいいか、どこまで踏み込んでいいか、本当にわかっていません。動きが鈍く見えるのは、多くの場合ここが理由です。
教師になる人は、学生時代に学級委員をしていたり、勉強が得意だったり、学校が好きだった人が中心です。自分が不登校を経験して教師になった人は、僕が出会ってきた同僚の中では圧倒的に少数派でした。学校に行けない感覚を、身体で知っている先生は少ない——これが現場の実感です。
② 学校の基本方針は「登校させること」。担任は板挟みにいる
管理職の立場からすると、不登校の子を出したくありません。ですから担任への指示は、「登校刺激を与える」——つまり、電話や家庭訪問で学校とつなぎ続ける方向がメインの結論になることが多いです。
この指示を担任がどう受け止め、保護者にどう伝えるか。そこで「そういうスタンスなのね、困る」と感じられた方も多いと思います。担任は学校の方針と、目の前の親子の気持ちのあいだで身動きが取りづらい状態にいます。
③ 「見守り」と「様子見の放置」が、担任自身にも区別できていない
「しばらく様子を見ましょう」は、学校でよく使われる言葉です。ただ、これには2種類あります。意図のある見守り(今は待つ時期だと判断している)と、次の手が思いつかないための先送りです。
正直に言えば、後者もあります。そして厄介なのは、言っている担任自身がどちらなのか自覚できていないことが少なくない点です。だからこそ、親のほうから「いつ、何を、誰が」を具体化してもらうと、話が一気に前に進みます。

担任のタイプ別|サインと、親の打ち手
先生にもタイプがあります。授業が上手い人、子どもの気持ちを汲むのが上手い人、生徒指導が得意な人。そして正直なところ、情熱が薄い人もいます。そのタイプと「不登校の子を担任した経験の有無」の掛け合わせで、お子さんへの対応も、保護者が受ける印象も決まってきます。
| タイプ | こんなサインが出ます | 親の打ち手 |
|---|---|---|
| 経験はないが、誠実 | 「どうしたらいいか一緒に考えさせてください」と言う。連絡はまめ | 一番やりやすい相手。こちらから具体的な依頼を出す(次章の3つ) |
| 登校させたい熱心タイプ | 家庭訪問や電話が多い。「みんな待ってるよ」と伝えてくる | 熱意は資産。向ける先を変えてもらう(登校ではなく「友だちとの接点づくり」へ) |
| 様子見で止まっている | 「様子を見ましょう」が続く。連絡は月1回以下 | 期限と担当を決める依頼に切り替える。改善しなければ学年主任へ |
| 情熱が薄い | こちらから連絡した時だけ反応。話が前に進まない | 担任を動かそうとしない。相談先を学校の外にも増やす |
「登校刺激をする先生/しない先生」で、良し悪しは決まりません
ここは、僕がこの記事で一番書きたいところです。
僕には、登校刺激をして登校しぶりから抜け出せた子との経験もありますし、登校刺激をしなかったことで、子どもとも保護者とも良い関係を築けた経験もあります。どちらも本当です。
正直に言えば、教師の側も「今この子に登校刺激をしていいのか」はわかりません。それは結果からしか言えないことだからです。ネット上には「学校も担任も信じるな」という言葉もありますが、実際の現場には、学校に来て当然と考える人もいれば、子どものペースに寄り添うのが当然と考える管理職もいます。
結局は「人」です。
方針が合う人なら任せていい。合わない人とは深追いせず、お子さんを守る。大切なのは、登校刺激の○×ではなく、その子が今どんな状態かを正しく把握すること。学校が中心でも、保護者が中心でもなく、子どもを真ん中に置いて考える——僕はそこだけは譲らないようにしていました。
担任に頼むのは、この3つだけでいい
「もっとちゃんと対応してください」は、残念ながら動きません。担任が動けるのは、やることが具体的に決まっているときだけです。頼むことを3つに絞りましょう。
① 友だちとつながる場面をつくってもらう(一番効きます)
現場で見てきた実感として、友だちの力は、家族や先生よりも圧倒的に強いです。別室や保健室に来られた日は、僕は必ず友だちに会いに来させて、楽しい時間を過ごさせました。それ自体が「行く理由」になるからです。
行きしぶりの子は、学校に行く理由(=いいことがある)を失っています。授業がわからない、話す友だちがいない。そこへ無理やり連れて行くのは、本人からすれば「修行してこい」と言われているのと同じです。だから担任に頼むのは、登校のうながしではなく接点づくり。
- 高学年なら「放課後に○○さんと遊ぶ時間を設定してもらえませんか」
- 低学年は子どもだけで約束を作るのが難しいので「大人が間に入ってもらえませんか」
- 登校した日は勉強より先に「友だちと過ごす時間を優先してもらえませんか」
② 連絡の「頻度」と「方法」を決めてもらう
親の不満の多くは、対応の中身ではなく連絡の不透明さから生まれます。ここは数字で決めるのが一番です。
「週に1回、金曜の夕方に、電話ではなく連絡帳でお願いできますか。こちらからも同じ頻度でお伝えします」——このくらい具体的だと、担任は動けます。電話が負担なら、そう言っていいのもポイントです。
③ 宿題・評価の扱いを、はっきりさせてもらう
宿題が毎日たまっていく状態は、子どもにも親にもじわじわ効いてきます。「今は宿題を止めていただけますか」「テストだけ別室で受けられますか」「成績はどう付きますか」を、早めに確認しておくと家の空気が変わります。
担任と合わないときの、相談先をたどる順番
担任に伝えても変わらないとき、同じ相手に不満を重ねても消耗するだけです。上ではなく、横と外に広げるのがコツです。
- 学年主任——担任と同じ職員室にいて、担任を助けられる立場。まずはここ
- スクールカウンセラー——学校の中にいる外部の目。学校・家庭・SCの三者で話す形をつくれます
- 教頭(副校長)・校長——連絡が1か月以上ないなど、体制の問題だと感じるとき
- 教育支援センター(適応指導教室)・フリースクール——学校の外の居場所。学校が動かなくても、子どもの側は進めます
公的な窓口と民間の違いや見学のポイントは、フリースクールと教育支援センターの違いにまとめています。教室に入れないけれど学校とはつながっていたい場合は、別室登校という選択肢もあります。
それから、周囲のママ友・パパ友からの情報も、実は貴重です。「あの先生は去年こうだった」は、どの資料にも載っていません。
ものさしは「担任がいい人か」ではなく「家の外のつながりが何本あるか」
最後に、判断に迷ったときの軸をひとつ。
不登校で一番心配なのは、学校に戻れないことではありません。家から出られなくなり、社会とも家族ともつながりが切れていくことです。つながりが細るほど、生きる意味が薄くなっていきます。
ですから、担任への評価に悩んだときは、問いをこう置き換えてみてください。
「この先生は、家の外とのつながりを1本増やしてくれる人か?」
増やしてくれる人なら、多少ぎこちなくても組む価値があります。増えないなら、担任に時間を使うより、友だちや別の居場所とのつながりにエネルギーを回したほうが、お子さんのためになります。担任は、つながりの1本目であって、全部ではありません。
まとめ|今日できる小さな一歩
- 担任が動かないのは、多くの場合やる気ではなく経験と裁量の問題
- 学校の基本方針は「登校させること」。担任は板挟みにいる
- 登校刺激の○×では、良い先生かどうかは決まらない。結局は「人」
- 頼むのは3つだけ——友だちとの接点/連絡の頻度と方法/宿題と評価の扱い
- 変わらないときは学年主任・SC・教育支援センターへ。担任1本に頼らない
今日できる一歩は、たぶんこれです。次に担任と話すときの「お願い1つ」を、紙に一行だけ書いておく。「金曜に連絡帳で週1回」でも、「登校した日は友だちと過ごす時間を先に」でも構いません。一行あるだけで、面談の中身がまるで変わります。
時間はかかるかもしれません。それでも、子どもを真ん中に置いて話し合った時間は、あとから効いてくると思っています。
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