「どんな言葉をかければいいのか、毎日わからなくなる」——
学校に行けなくなった我が子を前に、口を開くたびに「これで合っているのかな」と迷ってしまう。不登校のはじまりで、多くの親御さんがぶつかる壁です。
元小学校教員として15年、いまはスクールカウンセラーとして学校現場にいる立場から、この記事では不登校の子への「声かけ」で、実際に効いた言葉・逆効果になりやすい言葉を、現場の実感でお伝えします。むずかしい理論ではなく、今日から使える具体的な言葉です。
目次
声かけの前に、たった一つ知っておきたいこと
言葉を選ぶ前に、これだけは押さえてください。不登校の子は「行きたくない」のではなく、「行きたいけれど行けない」状態にいることが多いということです。
心と体のエネルギーを使い果たし、自分でも理由をうまく言えないまま動けなくなっている。だから、正論も励ましも、いまは届きません。声かけのゴールは「学校に行かせること」ではなく、「ここは安全だ」「あなたの味方だ」と伝えて、エネルギーがたまるのを待つこと。この土台があるだけで、選ぶ言葉が自然に変わります。
そのまま使える、効いた「声かけ」
私が現場で、行きしぶりや不登校の子に実際にかけていた言葉を紹介します。長いセリフは覚えなくて大丈夫。気持ちが伝わればいいので、我が家の言い方にアレンジしてください。
①「あなたが悪いわけじゃないよ。むしろ、素直な気持ちを言ってくれてありがとう。勇気がいったよね」
「行けない」と打ち明けるのは、子どもにとって相当な勇気です。責めるのではなく、打ち明けてくれたこと自体をねぎらう。これで子どもは「話しても大丈夫なんだ」と感じられます。
②「おうちのことは何も心配しないで、まずはゆっくり休もう。あなたが元気でいてくれることが、お父さんお母さんは一番うれしいんだよ」
不登校の子は「親をがっかりさせた」と自分を責めがちです。だからこそ、「あなたの存在そのものが大事」というメッセージをまっすぐ伝える。登校の話は、この安心が戻ってからで十分間に合います。
逆効果になりやすい「NGな声かけ」と、言い換え
良かれと思ってかけた言葉が、子どもを追い詰めてしまうこともあります。とくにやりがちなものを、言い換えとセットで表にしました。
| つい言いがち(NG) | 言い換えるなら |
|---|---|
| 「なんで行けないの?」(理由の問いつめ) | 「話したくなったら、いつでも聞くよ」 |
| 「もっと頑張れば行けるよ」(励まし) | 「今はしっかり休む時間だね」 |
| 「〇〇ちゃんは行ってるよ」(比較) | (他の子は出さない。その子のペースだけを見る) |
| 「明日は学校どうするの?」(毎朝の確認) | 「今週はいったんお休みにしよう」と先に決める |
とくに見落としがちなのが、いちばん下の「明日は学校どうするの?」を毎朝聞いてしまうこと。子どもは「行きたいけど行けない」状態なので、毎朝この質問をされると、朝が来ること自体がつらくなります。
不登校のはじめの時期は、思いきって「今週は1週間お休みにしよう」と親のほうから先に決めてしまうのがおすすめです。毎朝の「どうする?」から子どもが解放され、安心してその1週間を過ごせます。休むと決めた安心感が、次に動き出すためのエネルギーになります。
いちばん親を苦しめるのは、じつは「まわりの声」
ここは、専門家として本音でお伝えします。子どもへの声かけ以上に、親御さんを追い詰めるのが「周囲の声」です。
「甘やかしすぎじゃない?」「うちは無理やりでも行かせたよ」「昔はみんなそうやって乗り越えた」——祖父母や親戚、ときにはママ友から、こうした言葉が飛んできます。多くは悪気なく、心配して言っているのですが、時代も、その子の事情も違います。「無理やり引っ張って行ったら結果的に行けた」という一部の成功談を、目の前のあなたのお子さんに当てはめる必要はありません。
こういう声は、真に受けなくて大丈夫です。距離を置いていい。親御さんが周囲の声に揺さぶられて不安定になると、その不安は子どもにまっすぐ伝わります。まわりに合わせるより、目の前の我が子の様子だけを信じるほうが、結局はうまくいきます。
声を「かけない」勇気——高学年ほど、そっとしておく
意外に思われるかもしれませんが、「声をかけないこと」も立派な声かけです。とくに小学校高学年から中学生は、心の中を大人にあれこれ聞かれるのを嫌がる時期。この年代の子は、そっとしておいてほしいと思っていることがほとんどです。
だからといって、無関心とは違います。学校の話は横に置いて、好きなゲームやマンガ、テレビの話など「学校と関係のない話」で一緒に笑える時間を持つ。それだけで「見放されていない」と伝わります。低学年の子でも、この「学校と関係ない雑談を楽しむ」時間は効果があります。
相談や受診を考えたい「サイン」
声かけを工夫しても、子どもの状態が心配なときは、無理をせず専門家を頼ってください。次のような様子が続くときは、スクールカウンセラーや医療機関への相談を考えたいサインです。
- 朝、布団からどうしても起きられない日が続く
- 夜中に何度も目が覚める、眠れない
- 食欲が落ちている
- 以前は楽しめていたこと(ゲーム・趣味・友だちとの時間)も楽しめなくなっている
登校に楽しみが少しでもある状態なら、相談しながら見守るのでも大丈夫です。ですが、上のような様子が2週間以上続く場合は、担任やスクールカウンセラー、かかりつけ医など専門の窓口に相談してください。早めに頼るほど、子どもも親も回復が早くなります。
よくある質問
Q. 小学生と中学生で、声かけは変えたほうがいいですか?
A. 基本の「責めない・安心を伝える」は同じですが、年齢が上がるほど「そっとしておく」割合を増やすのがコツです。低学年は一緒に過ごす時間で安心を伝え、高学年〜中学生は距離を保ちつつ、学校と関係ない話で自然につながるイメージです。
Q. 何を言っても子どもが黙ってしまいます。無理に話させるべき?
A. 話さないのは「話したくない」というより「まだ話せない」ことが多いです。無理に聞き出すのは逆効果。「話したくなったら聞くね」とだけ伝えて、あとは待つ。同じ空間で穏やかに過ごしているだけで、子どもは安心を受け取っています。
Q. 良かれと思った言葉で、子どもを傷つけてしまったかもしれません。
A. 大丈夫です。完璧な親はいません。気づいたときに「さっきの言い方、ごめんね」と一言添えるだけで、子どもはちゃんと受け取ります。言い直せること自体が、信頼関係のある証拠です。
まとめ:立派な言葉より、「味方だよ」が伝わる言葉を
- 声かけのゴールは「行かせること」ではなく「安全・味方だと伝えること」
- 効いた言葉は「打ち明けてくれてありがとう」「元気でいてくれるのが一番うれしい」——主語を子ども自身に
- 毎朝の「学校どうする?」はやめて、先に「今週は休もう」と決める
- 祖父母や周囲の「甘やかしすぎ」の声は真に受けなくていい。我が子の様子だけを信じる
- 高学年ほどそっとしておく。学校と関係ない話で笑える時間を
今日、うまく言えなくても大丈夫です。声かけは一度きりの正解を探すものではなく、毎日少しずつ積み重ねていくもの。「あなたの味方だよ」という気持ちさえ根っこにあれば、多少言葉を間違えても、ちゃんと伝わります。まずは今日、肩の力を抜いて、隣で一緒にお茶でも飲むところから始めてみてください。心配な状態が続くときは、どうか一人で抱えず、専門の窓口を頼ってくださいね。











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