小学生の兄弟喧嘩が毎日続くと、親はイライラして声が大きくなります。喧嘩そのものより、「また始まった」と身構える毎日に疲れてしまいます。親が疲れない近道は、叱る前に両方の話を聞くことです。
夕方から寝るまで、泣き声と「やめて」が繰り返される。寝かせたあとに台所で、「兄弟喧嘩ばかりで疲れた」と検索している方もいると思います。
元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして保護者の相談を受けています。教室の喧嘩も家の兄弟喧嘩も、入り方の順番は同じだと私は考えています。親が明日そのまま言えるセリフつきでまとめます。
兄弟喧嘩の親の対応は止める時点と順番
兄弟喧嘩が毎日あっても、親が疲れにくくなる順番があります。ふざけ合いの段階で止める、本気になったら両方の話を聞く、叱るのは最後です。喧嘩の様子ごとに、親が今日することを表にしました。
| 喧嘩の様子 | 親が今日すること | そのまま言える一言 |
|---|---|---|
| ふざけてたたき合い・蹴り合い(本人たちは「遊び」と言う) | その時点で止める | 「たたく・蹴るは遊びじゃないよ。ここでおしまい」 |
| 本気の喧嘩(泣く・ものが飛ぶ) | まず両方の話を聞く。どちらが悪いか決めない | 「順番に聞くね。何があった?」 |
| いつも同じ子がやられる・けがをする | すぐ止めて分ける。担任に学校での様子を聞く | 「まず離れよう。話はあとで聞く」 |
どの様子でも、見た場面だけで片方を叱らないのが大事です。経緯を知らないまま叱ると、子どもは納得しません。
ふざけ合いの段階で止める
兄弟喧嘩は、初めは2人ともふざけてたたき合い、蹴り合いから始まります。本人たちは「本気じゃない、遊びだから」と言います。ただ、教室で見てきた限り、ふざけ合いは大抵そのまま本気の喧嘩になります。
止めるのは、遊びと言っている段階です。「人をたたいたり蹴ったりするのは、遊びではなくて暴力だよ」と伝えて、その時点で終わりにします。
本気になってからでは、同じ言葉を言っても聞く耳をもちません。親が入るのは、泣き声が出てからではなく笑い声のうちです。
本気になったら両方の話を聞く
本気の喧嘩になったら、どちらが悪いか裁かずに、両方の話を聞きます。「順番に聞くね」と言って、まず1人ずつ話をさせます。口をはさまず、状況を把握するだけです。
聞いているうちに、喧嘩の全体が見えてきます。「先に取ったのは下の子で、たたいたのは上の子」のように、どちらにも理由があるとわかります。
叱るのはそのあとで短く
伝えたいことは、両方の話を聞いたあとで伝えます。たたいたこと、取ったこと、それぞれにいけなかった点を短く言います。
結果的には、喧嘩両成敗の形がうまくいくことが多いです。片方だけを叱らずにすむので、叱られた側の不満が残りにくくなります。
両方の話を聞くと親の怒りが先に収まる
両方の話を聞く理由は、子どものためだけではありません。先に収まるのは、親の怒りのほうです。
片方に向いていた怒りが収まる
喧嘩を見た瞬間の親は、目に入った子に腹を立てています。「またお兄ちゃんがたたいた」と、怒りが片方に向いています。
両方の話を聞いて全体が見えると、片方だけに向いていた怒りが収まっていきます。全体を知ったあとに伝える言葉は、怒鳴り声にならず、声のトーンが下がります。トーンが下がると、子どもは聞き入れやすくなります。
見た場面だけで叱らない
いちばん避けたいのは、たまたま見た場面だけを取り上げて、いけないことをした側を叱ることです。親が見たのは、喧嘩の最後の一場面にすぎません。
そこに至るまでの経緯を全部把握してから叱らないと、子どもは納得しません。納得しないまま叱られた子は、「見てないくせに」と不満だけを残します。
「お兄ちゃんでしょ」が効かない理由
「お兄ちゃんでしょ」と上の子に我慢させる言い方は、ほとんどうまくいきません。私が見てきた限り、上の子に不満が残るだけで、喧嘩は減りませんでした。
上の子に不満だけが残る
いきなり叱られたり、年上だからと我慢させられたりすると、上の子には不満だけが残ります。「自分の話は聞いてもらえない」と感じた子は、次の喧嘩で前より強く出るかもしれません。
下の子にとっても、「泣けば上が叱られる」と覚えるきっかけになります。どちらにも、いいことがありません。
言いがちな言葉の言い換え
口から出やすい言葉を、両方の話を聞く形に言い換えた表です。
| 言いがちな言葉 | 言い換え |
|---|---|
| 「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」 | 「お兄ちゃんの話も聞くね。何がいやだった?」 |
| 「どっちが先にやったの!」 | 「順番に聞くね。最初に何があった?」 |
| 「もういい加減にして!」 | 「いまは離れよう。あとで2人の話を聞く」 |
| 「遊びならいいけど、けがしないでね」 | 「たたく・蹴るは遊びじゃないよ。ここでおしまい」 |
言い換えは、1回で身につくものではありません。「どっちが先!」と言ってしまった日があっても、次の喧嘩でやり直せます。
毎日続くときは担任に様子を聞く
家の喧嘩が毎日続くときは、担任に学校での様子を聞いてみてください。家で強く出る子が、学校では我慢しているかもしれません。
担任に聞く一言
連絡帳や電話で、「最近、学校で変わった様子はありませんか」と聞くだけで十分です。(「家で兄弟喧嘩がひどくて」と先に伝えると、担任も身構えます。様子を聞く形にしてください。)
学校で友だちとうまくいっていない、授業がわからないなど、家の外に理由が見つかることもあります。家で出ているのは、気持ちを出せる場所が家だからかもしれません。
相談を考える様子
喧嘩そのものは、どの家でも起きます。ただし、次の様子が続くときは、担任やスクールカウンセラーに相談してください。
- いつも同じ子が一方的にやられている
- けがをする喧嘩が続いている
- ものを使ってたたく
- 朝起きられない・眠れない・食欲が落ちているなどが2週間以上続く
相談は、どちらかを悪者にするためではありません。家の中だけで抱えていると、親の目だけで決めることになります。外の目が1つ入るだけで、見え方が変わります。
仲裁に疲れた親が自分を責める前に
毎日の仲裁に疲れると、「私の育て方が悪いのでは」と自分を責めたくなります。兄弟喧嘩が毎日あること自体は、育て方の失敗ではありません。
変えられるのは、喧嘩が起きたあとの順番だけです。ふざけ合いのうちに止める、本気になったら両方を聞く、叱るのは最後。親の性格を変える話ではありません。
気持ちが沈んだまま戻らないときは、不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらも読んでください。限界のサインと、自分を責めないための考え方をまとめています。
よくある質問
Q. 兄弟喧嘩は放っておいていいと聞きました
言い合いだけなら、見守るだけでかまいません。ただ、たたく・蹴るが始まったら、遊びと言っていても止めます。
放っておくかどうかは、回数ではなく中身で決めます。手が出ているか、同じ子ばかりやられていないかを見てください。
Q. 下の子が先に手を出すのに、泣くのも下の子です
泣いている子の話だけで決めずに、上の子の話も同じ時間だけ聞きます。「先に手を出したのは下の子」とわかれば、伝える相手が変わります。
下の子には「手を出したら、やり返されても文句は言えないよ」ではなく、「たたくのはなし。いやだったら口で言おう」と伝えます。
Q. 夫は「兄弟喧嘩は放っておけ」と言います
夫婦でそろえるのは、「たたく・蹴るは止める」の1点だけで十分です。言い合いを止めるかどうかは、意見が違っていてもかまいません。
どちらかが仲裁に疲れているなら、その日の仲裁はもう1人に代わってもらってください。親が交代するだけで、怒鳴る回数が減ることがあります。
Q. 年の差があって、力の差が大きいときは?
力の差が大きいときは、ふざけ合いの段階で止める基準を低くします。上の子が軽くたたいたつもりでも、下の子にはけがになります。
上の子には「力が強いぶん、遊びでも手は出さない」と伝えます。我慢させる言い方ではなく、強さを認めたうえでの約束にしてください。
まとめ
- ふざけ合いの段階で止める。「たたく・蹴るは遊びじゃない」
- 本気の喧嘩は、両方の話を聞いてから伝える
- 両方を聞くと、親の怒りが先に収まる
- 見た場面だけで片方を叱らない
- 「お兄ちゃんでしょ」は不満だけが残る
- 毎日続くなら、担任に学校での様子を聞く
- けが・一方的・眠れないが続いたら、相談する
今日できる一歩は、次に喧嘩が始まったとき、叱る前に「順番に聞くね」と言うことです。
全部を聞き終えたとき、怒鳴るつもりだった言葉が、ふつうの声になっているかもしれません。その日が1日ずつ増えていけば、毎日の喧嘩は同じでも、親の疲れ方は変わっていきます。
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