小学生が嘘ばかりつくのはなぜ?〜元教員・公認心理師が伝える「まずありがとう」の順番〜

教育

小学生が嘘ばかりつくと、親は「この先も嘘が続くのでは」と不安になります。嘘が続くのは、正直に言うと怒られる、損をすると子どもが思っているときです。減らす近道は、正直に言えた直後に「ありがとう」を先に言うことです。

「宿題やった」と言ったのに、ノートは白紙。「たたいてない」と言い張るのに、きょうだいは泣いている。問い詰めて泣かせてしまい、寝かせたあとに検索している方もいると思います。

保護者

うちの子、毎日のように小さな嘘をつきます。問い詰めると、さらに嘘を重ねます。このまま嘘つきになってしまうのではと心配です…。
先生

嘘が続くのは、正直に言うと損をするとお子さんが感じているからだと私は考えています。正直に言えたときの最初の一言を変えると、親の声も落ち着きます。順番をお伝えします。

元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして保護者の相談を受けています。教室でも家でも、子どもが嘘をつく場面には共通点があります。現場で考えてきた順番を、そのまま言えるセリフつきでまとめます。

小学生が嘘ばかりつくときの最初の一言

小学生が嘘ばかりつくときは、正直に言えた瞬間に「ありがとう」を先に言います。叱る内容は、そのあとに伝えます。よくある場面ごとに、最初の一言とあとで伝えることを表にしました。

よくある場面正直に言えたときの最初の一言あとで伝えること
「宿題やった」と言ったのに、やっていなかった「本当のことを言ってくれてありがとう。言いにくかったよね」「何時からやるか、一緒に決めよう」
きょうだいをたたいたのに「やってない」と言った「話してくれてありがとう。勇気がいったよね」「たたくのはなし。何がいやだったか教えて」
テストやプリントを隠していた「出してくれてありがとう。見せるの、こわかったね」「点数では怒らないよ。わからなかったところを一緒に見よう」
学校のことで話がかみ合わない「教えてくれてありがとう」問い詰めずに、担任に学校での様子を聞く

どの場面でも、嘘をついたことを先に叱らないのが大事です。先に叱られると、子どもは「正直に言っても怒られる」と覚えてしまいます。

先に「ありがとう」と言う

正直に言えた直後は、「ありがとう。勇気がいったよね」と伝えます。怒られるかもしれない、損をするかもしれないと思いながら本当のことを言うのは、子どもにとって勇気がいることです。

「ありがとう」を積み重ねると、子どもは「この人なら正直に言える」「聞いてくれる」と感じるようになります。そう感じている子は、嘘をつかなくなっていくと私は考えています。

保護者

嘘をついたのに、お礼を言うんですか?甘やかしにならないか心配です。
先生

お礼を言うのは、嘘にではなく本当のことを言えたことにです。いけなかったことは、そのあとできちんと伝えます。

感謝が先だと親の声が落ち着く

「ありがとう」を先に言う理由は、子どものためだけではありません。先に感謝を口にすると、親の怒りのトーンが下がります。

嘘に気づいた瞬間の親は、頭に血がのぼっています。勢いのまま叱ると声が大きくなり、言うつもりのなかった言葉まで出てしまいます。「ありがとう」をはさむと、ひと呼吸おけます。落ち着いた声で伝えたことのほうが、子どもにも入りやすくなります。

叱るのはあとで短く

いけないことをしたときは、きちんと伝えます。感謝を先に言うのは、叱らずにすませるためではありません。伝わる順番にするためです。

伝えるときは短くします。「宿題は、やってから遊ぶ約束だったよね」「たたくのはなし」のように、1つか2つで止めます。嘘をついたことを何度も責めると、子どもには逃げ道がなくなります。

嘘をつくのは損をすると思うとき

子どもが嘘をつくのは、正直に言うと怒られる、損をすると思ったときです。大人も、実は同じではないでしょうか。

大人が嘘をつくときと同じ

自分がどんなときに嘘をつくか、思い出してみてください。正直に言うと怒られるとき、本当のことを言うと自分が損をするとき。私自身、思い当たるのはそんな場面です。

子どもも変わりません。嘘を減らしたいなら、「正直に言うと損をする」と思わせないことが大切です。

正直に言って損ばかりだと増える

嘘が増えていくのは、正直に言ったらひどく怒られた経験が重なったときです。正直に言って得をしたことがなく、損ばかりなら、子どもは次も嘘を選びます。

思い当たることがあっても、自分を責めなくて大丈夫です。正直に言ったあとの流れは、今日から変えられます。

嘘をつく場面を作らない聞き方

嘘を減らすには、嘘をつかなくてすむ聞き方に変えるのも方法の1つです。答えを知っているのに聞くと、子どもを嘘をつく場面に立たせてしまいます。

わかっていることは聞かない

宿題がまだなのを知っているのに「宿題やった?」と聞くと、子どもは「やった」と答えたくなります。答えがわかっているときは、事実をそのまま伝えます。

「宿題、まだみたいだね。何時からやる?」と聞けば、嘘をつく必要がありません。たしかめる質問より、次にすることを聞く質問のほうが、親子ともに楽です。

宿題そのものが毎晩の言い合いになっているなら、小学生が宿題をやらない・毎晩イライラするときも参考にしてください。

証拠を並べて追い詰めない

「ノートは白紙だったよ」「先生にも聞いたよ」と証拠を1つずつ並べると、子どもは追い詰められます。追い詰められた子は、認めるより嘘を重ねるほうを選びがちです。

本当のことがわかっているなら、「本当はどうだった?」と1回だけ聞いて待ちます。言えたら、表の最初の一言につなげます。

嘘で隠しているものを見る

嘘そのものより、嘘で何を隠しているかに目を向けます。学校のことの嘘は、困りごとを隠しているときがあります。

学校のことは担任に聞く

「今日は友だちと遊んだ」と言うのに、表情が暗い。学校の話になると、話がかみ合わない。そんなときは、お子さんを問い詰める前に担任に学校での様子を聞きます。

連絡帳や電話で、「最近、学校で変わった様子はありませんか」と聞くだけで十分です。(「うちの子が嘘をついていて」と先に伝えると、担任も身構えてしまいます。様子を聞く形にしてください。)

相談が要る嘘はあまりない

スクールカウンセラーとして正直に言うと、「この嘘は相談したほうがいい」と言える嘘は、あまりありません。嘘の中身より、「この人なら正直に言っても損をしない」とお子さんが感じているかのほうが大事です。

ただし嘘とは別に、次の様子が2週間以上続くときは、小児科やスクールカウンセラーに相談してください。

  • 朝、布団から起きられない
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 食欲が落ちている
  • 好きだったことを楽しめない

嘘で隠しているのが、学校でのつらさのこともあります。様子が気になるときは、親だけで抱えないでください。

嘘に疲れた親が自分を責める前に

毎日嘘を見抜こうと身構えていると、親はくたくたになります。「嘘をつく子は、親の育て方のせい」と書かれた記事を読んで、つらくなった方もいるかもしれません。

家の中で変えられるのは、正直に言ったあとの流れです。親の性格を変える話ではありません。今夜の「ありがとう」から始められます。

自分を責める気持ちが止まらないときは、不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらも読んでください。限界のサインと、自分を責めないための考え方をまとめています。

よくある質問

Q. 嘘つきは治らないのでしょうか

嘘が続いているのは、いまの家の中で「正直に言うと損」とお子さんが感じているからだと私は考えています。正直に言えたあとの流れが変われば、嘘は少しずつ減っていきます。

すぐには変わりません。「ありがとう」を何回も重ねた先で、変化が見えてきます。

Q. ADHDなど発達の特性があると、嘘をつきやすいですか

嘘の多さだけで、特性があるかどうかは判断できません。やり忘れたことを責められたくなくて、「やった」と言う子もいます。

やり忘れや忘れ物が毎日のように続いて困っているなら、担任に学校での様子を聞いてみてください。必要なら発達相談で話してみるのも方法の1つです。診断は医師の仕事なので、私は「相談していい状態か」だけをお伝えしています。

Q. 嘘だとわかっているのに認めないときは?

その場で認めさせようとしなくて大丈夫です。「そうなんだね。あとでまた聞かせて」と、いったん話を終えます。

時間をおいて落ち着いてからのほうが、本当のことを言いやすくなります。話してくれたときは、「ありがとう」から始めます。

Q. 夫は「嘘は厳しく叱るべきだ」と言います

厳しく叱ること自体が悪いわけではありません。命に関わることや人を傷つけることは、はっきり伝える必要があります。

ただ、正直に言った直後に強く叱られると、子どもは次から隠すようになります。夫婦でそろえるのは「正直に言えたら、まずありがとう」の1点だけで十分です。

まとめ

  • 嘘ばかりつくのは、正直に言うと怒られる・損をすると思っているとき
  • 正直に言えたら、まず「ありがとう。勇気がいったよね」
  • 先に感謝すると、親の声も落ち着く
  • 叱るのはあとで短く
  • わかっていることは「やった?」と聞かない
  • 学校のことの嘘は、問い詰める前に担任に様子を聞く
  • 眠れない・食べられないなどが2週間続いたら、相談する

今日できる一歩は、次にお子さんが本当のことを言えたとき、叱る前に「ありがとう」と言うことです。

正直に言って損をしなかった経験は、1回ずつ積み重なっていきます。「この人には本当のことを言える」とお子さんが感じる日は、小さな「ありがとう」を重ねた先にあります。

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