夏休み明け、9月1日の朝に「行けない」となったら〜元教員・公認心理師が伝える、その日の動き方と選択肢マップ〜

教育

夏休みが終わる朝。子どもが布団から出てこない。「学校、行きたくない」——
その一言を聞いた瞬間、頭が真っ白になる親御さんを、私は現場で何人も見てきました。

今日から二学期なのに、朝になって「行けない」と泣かれてしまって…。仕事もあるし、今この瞬間どうすればいいのか、本当にわかりません。

大丈夫、その朝にやることは3つだけです。「行かせる説得」は、その3つに入っていません。順番にお話ししますね。

元小学校教員として15年、いまはスクールカウンセラー(公認心理師)として学校現場にいる立場から、この記事では「行けなかった当日の朝」に親がやること3ステップと、そこからの2週間で使える選択肢マップをお伝えします。学校への欠席連絡の言い方も、例文つきで紹介します。

先に結論:9月1日は「勝負の日」ではありません

まず、いちばん大事なことを先に言います。9月1日に行けなくても、二学期が終わったわけではありません。二学期は9月1日だけでできているのではなく、この先に何十日もあります。初日は、そのうちの1日です。

夏休み明けは、一年でいちばん行き渋りが出やすい時期です。生活リズムの変化、宿題の不安、友達関係の再スタート。大人だって長い休み明けの朝は体が重いのですから、子どもに出ないほうが不思議です。不登校の小中学生は文部科学省の調査で34万人を超えています(令和5年度)。「うちだけ」では、まったくありません。

そして、これは学校の中にいた人間としての正直な実感ですが——教員は、夏休み明けの初日に全員がそろうとは思っていません。職員室では「初日はしんどい子が出やすい」というのは共通認識で、欠席や行き渋りの連絡は珍しいものではないのです。だから「初日から休んだら、先生にどう思われるか」という心配は、いったん横に置いて大丈夫です。

※夏休みのうちにできる準備については別の記事に書きました。この記事は「準備していても、当日の朝に行けなかったら」のための記事です。

その朝にやること3ステップ

ステップ1:「今日は休もう」と親のほうから決めて伝える

泣いている子、布団から出られない子に「どうする?行く?行かない?」と聞き続けるのは、実はいちばん子どもを追い詰めます。決められないから苦しんでいるのです。

そこで、親のほうから先に決めて伝えます。「わかった。今日は休もう。責めてないよ」——これだけで十分です。行くか行かないかの交渉をその朝にしない。これがステップ1です。

ステップ2:学校に欠席連絡をする(正直でいい)

連絡の理由に悩む方が多いのですが、体調不良と言い換えなくて大丈夫です。例えばこんな言い方で十分です。

例文:「おはようございます。◯年◯組の◯◯の母(父)です。今朝、学校に行きたくないと言っていて、今日はお休みさせます。様子を見て、またご連絡します。」

職員室で欠席連絡を受ける側だった立場から言うと、正直に「行きしぶりがあって」と伝えてもらえたほうが、学校は動けます。「発熱」と聞けば学校は待つだけですが、「行きしぶり」と聞けば、担任は席の配置や友達関係を見直したり、スクールカウンセラーにつないだり、初動の準備を始められるのです。情報は、子どもを守る道具になります。

ステップ3:その日は「休養日」にする

休ませると決めたら、その日は責めない・説教しない・「明日は行くよね?」の約束を取り付けない。この3つを守ってください。休ませたのに家庭が気まずい空気になると、子どもは「休んだ罪悪感」だけを積み上げます。普通のごはんを食べて、普通に過ごす。それがその日の正解です。

でも、あっさり休ませたら「休みグセ」がつきませんか?

1日の休養で「クセ」はつきません。残るとしたら、「限界の日に休ませてもらえなかった記憶」や「休んだ日に責められた記憶」のほうです。

「このまま様子見でいい?」の見きわめ

休ませたあと、親として知りたいのは「これは一時的なものか、続くものか」だと思います。目安を表にしました。

様子見でOKのサイン早めに相談したいサイン
休んだ日は家で元気に過ごせる朝、布団から起き上がれない日が続く
友達や好きなことの話をする夜中に何度も目が覚めている
2〜3日で自分から登校の話をし始める食欲が落ちている
行けない理由を少しずつ話してくれる前は楽しめていたことを楽しめない

右の列のサインが2週間以上続く場合は、スクールカウンセラーへの相談や、児童精神科・小児科の受診を考えてください。これは「大げさ」ではなく、体と心の休息が必要なサインです。ひとりで抱えず、専門家を頼ってください。

最初の2週間の「選択肢マップ」

行けない日が続きそうなとき、親が知っておくと楽になるのは「学校に行く/行かない」の二択ではない、ということです。実際には、間にたくさんの選択肢があります。

選択肢どんな段階・状況に向くか
担任と情報共有すべての出発点。行けない日も、家での様子を短く伝えておくと学校が動ける
スクールカウンセラー面談親だけの相談からでもOK。多くの学校に定期的に来ている
別室登校・保健室登校「教室は無理だけど学校までなら」の段階。多くの学校で出席扱い(最終判断は学校)
教育支援センター(適応指導教室)学校の外に居場所がほしい段階。自治体運営で費用がかからないことが多い
自宅学習の「出席扱い」制度家から出るのが難しい段階。文科省の制度で、条件を満たせば自宅学習が出席になる
フリースクール学校以外の人とのつながりがほしい段階。民間運営で内容や費用はさまざま

大事なのは、これらは「どれか1つを選ぶもの」ではなく、組み合わせて使えるということです。たとえば「週1回だけ保健室に行き、家では出席扱い制度で学習し、SC面談を続ける」という形も普通にあります。自宅学習の出席扱い制度は知らない先生も少なくないので、親が知っておくと強い制度です。詳しくは出席扱い制度の記事にまとめています。

9月1日に行けなかったら、そのまま不登校が「確定」するのかと思っていました…。選択肢って、こんなにあるんですね。

まとめ:初日に行けなくても、二学期は終わらない

もう一度だけ、繰り返します。

  • その朝は、親が先に「今日は休もう」と決めて伝える
  • 学校には正直に連絡していい。そのほうが学校は動ける
  • 休んだ日は責めない・説教しない・約束を取り付けない
  • つらいサインが2週間以上続くなら、スクールカウンセラーや医療機関へ
  • 「行く/行かない」の間には、組み合わせて使える選択肢がいくつもある

9月1日の朝に行けなかったことは、失敗ではありません。子どもが「ここが限界」と教えてくれた、大事な情報です。そして情報があれば、親も学校も動けます。今日できる一歩は、担任への正直なひとことの連絡。それだけで、もう対応は始まっています。


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