「不登校はいつまで待つのか」に、月数で答えることはできません。私が見てきた「待つのをやめる合図」は、本人の口から「暇だな」「何かしたい」が出たときです。そこまでの時間が「待っている」のか「放っておいている」のかは、期間でなく5つの見るところで分かれます。
休み始めて2か月、3か月とたつと、親の中で同じ問いがぐるぐる回ります。学校の先生やスクールカウンセラーには「今は見守って」と言われた。でも、毎日ゲームをする姿を見ていると、放っておいているだけに思えてくる。そんな夜に検索している方は少なくありません。
元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして保護者の相談を受けています。「いつまで待てばいいですか」は、相談室でいちばん多い質問の1つです。
不登校はいつまで待つ?期間では決まらない
待つ長さを先に決めるより、いまの関わりが「待っている」側にあるかを確かめてください。表の右に当てはまる項目が多いほど、放っておく状態に近づいています。
| 見るところ | 待っている | 放っておいている |
|---|---|---|
| 子どもとの会話 | 学校以外の話を毎日している | 会話がほとんどない |
| 担任との連絡 | 月に1回は様子を伝え合っている | 連絡が途切れている |
| 親の相談先 | 親が本音を話せる相手がいる | 親も1人で抱えている |
| 家の空気 | これまでどおりに過ごしている | 毎日の様子を見張っている |
| 食事と睡眠 | だいたい守れている | 昼夜逆転や食事抜きが続く |
表の右に当てはまっても、親が悪いわけではありません。初めての不登校で、家の中が混乱するのはふつうのことです。右の項目を1つずつ左に戻していくことが、「待つ」の中身になります。
待つのをやめる合図は「暇だな」
本人が「暇だな」「何かしたいな」と言い始めたときが、待つのをやめる合図です。親が決めた期限ではなく、本人の言葉を目安にしてください。
合図は本人の口から出る
私が見てきた子どもたちは、元気が戻るとまず家にいるのが退屈になります。ゲームに飽きた、家でやることに飽きた、と口に出します。自分から「何かやりたい」と言い出す子もいます。
合図が出るまでの長さは、子どもによって本当に違います。数週間で出る子もいれば、年単位の子もいます。合図が出るまでの日中の過ごし方は、不登校の小学生、日中の過ごし方は?にまとめています。
合図の前に押すと逆効果
合図が出る前に塾や習い事の教室に連れていくと、ほとんどの子は拒否から入ります。何のために行くのか説明されないまま連れていかれた子は、その場所を「親とグルの敵」だと受け取ります。学校へ行く理由がなくなっている子に「行きなさい」と言うのは、修行をしてこいと言うのと同じです。
初めての場所は、元気な子でも緊張します。休んでいる子なら、なおさら強い抵抗を見せます。断られても失敗ではなく、まだ合図の前だったと受け取ってください。
合図が出たら小さく誘う
「暇だな」が出たら、誰かとつながる機会を1つだけ出してみてください。「土曜に○○くんが公園に来るみたいだよ」「前に通っていた教室、のぞいてみる?」くらいの軽さで十分です。
初めは断る子がほとんどです。暇な時間が長くなると、あとから「行ってみようかな」と言い出す子を何人も見ました。断られたら引いて、また暇そうなときに出すことを繰り返します。
待つあいだに親が待たないこと3つ
子どもを待つ時間と、親が動く時間は別です。子どもを急かさないまま、親が動けることが3つあります。
担任との連絡は切らさない
月に1回でいいので、担任と様子を伝え合ってください。担任の側は、保護者との連絡が減ると不安が強まります。「この先どうなるのだろう」「誰がこの子を支えているのだろう」と、担任の中で心配がふくらみます。
電話で伝える内容は、学校の話でなくてかまいません。「最近は家でこんなふうに過ごしています。学校で何か変わったことはありますか?」で十分です。
家庭訪問や電話を断りたいときの伝え方は、不登校の家庭訪問・担任からの電話、断っていい?に書きました。
相談は初期から始める
親の相談は、子どもが元気になるのを待たずに始めてください。不登校の初めの時期は、家の中が混乱しがちです。夫婦の意見が割れ、親が自分を責め、子どもに不安が伝わります。
外部の専門家に話すことで、親が冷静に判断できるようになります。私がスクールカウンセラーとしてうれしいのは、不登校の初めの不安な時期に来てもらえたときです。もう1つは、本人が「暇になってきた」と言い始めて、少し誘ってみようかと思う時期です。どちらも親が1人で決めなくていい場面です。
家以外の居場所を確保する
不登校でいちばん心配なのは、家族以外との縁が切れて引きこもりが進むことです。学校へ戻れるかどうかより、家以外につながりがあるかを見てください。
つながりは学校でなくてかまいません。本人が嫌がらない場所を1つ確保します。別室登校や習い事のほか、祖父母の家や教育支援センターでもかまいません。家族以外に会えている相手がいるかどうかが、「待っている」と「放っておいている」の分かれ目です。
待てなくなった親へ
待てなくなるのは、親が弱いからではありません。毎日ゲームをする姿を見続けて、平気でいられる親はいません。「いつまで」と検索しているのは、それだけお子さんを見ている証です。
ただし、親の不安はそのまま子どもに伝わります。子どもは、ただでさえ休んでいることに罪悪感をもっています。親の心配が強く伝わると罪悪感がさらに強まり、動き出しが遅れます。
だから親が先に、自分のしんどさを話す場所を作ってください。相手は配偶者でも友人でもスクールカウンセラーでも、誰でもかまいません。親自身の限界サインと頼れる先は、不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらにまとめています。
受診を考えるサイン
次の4つのうち1つでも2週間以上続くときは、待たずに小児科や児童精神科に相談してください。
- 朝、布団から起き上がれない
- 夜中に何度も目が覚める
- 食欲が落ちている
- 以前楽しめていたことを楽しめない
4つに当てはまらず、家では笑って過ごせているなら、合図を待つ時間として過ごして大丈夫です。判断に迷うときは、担任かスクールカウンセラーに様子を伝えてください。
よくある質問
Q. 不登校の期間の平均はどれくらいですか
公的な調査で「平均○か月」と示したものは、私の知る限りありません。数週間で戻る子もいれば、年単位で続く子もいます。期間を比べるより、表の5項目と合図を見るほうが役に立ちます。
Q. 1日中ゲームをしていても待っていいですか
休み始めの時期なら、私は1日中ゲームでもいいと考えています。ゲームの時間は、学校での嫌なことや休んでいる罪悪感を忘れられる数少ない時間だからです。取り上げたり隠したりして、大きな衝突になった例を何度も見ました。
毎日続いて何か月もたつなら、ルールを一緒に決めるときです。決め方は小学生のゲーム依存が心配なときに書きました。
Q. 勉強の遅れが心配で待てません
勉強は、本人が「暇だ」と言い始めてからで間に合う子が多いです。先に勉強を入れると、家まで学校と同じしんどい場所になります。合図が出たあとの選択肢は、不登校の家庭教師はいつから?で向く子・向かない子を正直に書いています。
Q. 「見守って」と言われましたが、何もしないのが不安です
「見守って」は、お子さんに登校を迫らないでほしい、の意味です。親が担任と連絡を取ることも、相談先をもつことも、見守りの中に入ります。家以外の居場所を探すことも同じです。表の左を1つずつ増やすことが、見守りの中身です。
まとめ
- 不登校をいつまで待つかは、期間でなく「待っている」か「放っておいている」かで決める
- 待つのをやめる合図は、本人の「暇だな」「何かしたい」
- 合図の前に押さず、合図が出たら小さく誘う
- 待つあいだも、担任との連絡・親の相談・家以外の居場所は待たない
- 親が待てなくなったら、先に親のしんどさを話す場所を作る
今日できる一歩は、担任に「最近は家でこんなふうに過ごしています」と1本電話を入れることです。
待つ時間は、何もしていない時間ではありません。表の左が増えていれば、お子さんが「暇だな」と言う日に向けて、家の準備は進んでいます。
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