「まだ学校に行けていないの?」と聞かれます。悪気がないのは分かります。ただ、うまく答えられません。
親戚の集まりが近づくと、気が重くなります。ママ友からのLINEを開くのがこわくなります。同じ状態の親御さんを、私は何人も見てきました。
先に結論をお伝えします。まわりを説得しなくて大丈夫です。
元小学校教員として15年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして学校現場にいます。面談で「親戚やご近所に言われてつらい」とこぼされる場面を、何度も聞いてきました。
相談を受ける側から見えたことを書きます。なお私の現場は小学校です。中学以降は事情が変わる部分があります。
まわりを説得する必要はありません
まわりの理解は、目標から外してください。理解は結果として起きるもので、こちらの努力で起こせるものではありません。決めるのは、相手ごとの線引きです。
| 相手 | どうするか |
|---|---|
| 学校・担任 | 事実を伝える。配慮をお願いする |
| 同居の家族・パートナー | 話す。ただし説得はしない |
| 実の親(自分の親) | 短く伝える。判断はゆだねない |
| 義父母 | 実の子である側が伝える |
| ママ友・ご近所 | 聞かれたことにだけ答える |
| 親戚の集まりで会うだけの人 | 何も言わなくてよい |
分かってもらえた家庭は、ほとんどありません
まわりへの説明で消耗しなかった家庭は、受け流して自分のスタンスを貫いていました。ただし、そういう親御さんはほとんどいません。我が子が不登校になって、親自身も弱っているからです。
弱っている人が、誰かを説得するのは無理があります。うまく説明できないのは、あなたの力不足ではありません。
目的は「理解してもらうこと」ではありません
説明の目的を1つに絞ります。子どもの味方の場所から動かないことです。まわりの納得は、あとからついてきたら得くらいに考えてください。
目的が変わると、返す言葉も変わります。勝つ必要がなくなるからです。
現場で聞いた、実際に言われている言葉
親御さんが実際に言われている言葉を並べます。私が面談で聞いてきたものです。
- 「あなたの厳しさが足りないのよ」
- 「無理やりにでも連れていかないと、ダメになっちゃうんじゃない?」
- 「昔はそんなことは許されなかった」
- 「うちもそういう時あったけど、『何言ってんの、早く行きなさい』で行かせたよ。それきり休みたいって言わなくなった」
- 「嫌なことから逃げてたら、そういう大人になっちゃうでしょ? いいの?」
一番こたえるのは、味方だと思っていた人の一言です
知らない人の言葉は、案外流せます。刺さるのは義父母や実の親の一言です。味方であってほしい相手だから、深く入ります。
義父母からの何気ない一言で苦しくなっている家庭を、私は多く見てきました。相手にとっては世間話でも、受け取る側には判決のように届きます。
あなたの言い方が下手なわけではありません
言われる理由は、説明不足ではありません。相手が自分の時代の常識で話しているだけです。学校を休む選択肢がなかった世代には、いまの状況が想像しにくいところがあります。
説明を足しても、相手の常識は変わりません。説明の量を増やす方向には進まないでください。増やすほど、こちらが削れます。
迷ったら「この返事のあと、子どもから見て私はどっち側か」で決めます
返事に迷ったときの判定は、1つで足ります。その返事をしたあと、子どもから見て自分がどちら側の人間になるかです。
まわりに合わせた返事は、その場をおだやかにします。ただし家に帰ってからの立ち位置が変わってしまいます。
言われたとおりに行かせて、関係が壊れた家庭があります
まわりに言われたとおり、無理やり学校へ行かせた家庭がありました。結果として、子どもとの関係が壊れました。子どもが、親を味方だと思ってくれなくなったのです。
そのあと部屋から出られなくなるところまでつながるのか。私には分かりません。そこから先を追跡できていないので、推測の域を出ません。
確かなのは手前までです。親が世間の側に立った日を、子どもは覚えています。
よその家でうまくいった方法は、そのまま持ち込めません
「うちはこれで行けるようになった」——よその家の成功談は、参考程度にとどめてください。子どもの状態も、学校の様子も、家庭の事情も違います。目の前の我が子の様子を見ることが、いちばん確かな材料です。
相手別・そのまま使える短い返し方
返し方は短いほど楽になります。説明を長くすると、相手に議論の入口を渡してしまいます。
| 相手 | 言われがちな一言 | 返し方 | 言わないこと |
|---|---|---|---|
| 義父母 | 「甘やかしすぎじゃない?」 | 「心配してくれてありがとう。いま学校とも相談しながらやっています」 | 原因の説明・専門用語での反論 |
| 実の親 | 「無理にでも行かせなさい」 | 「そういう考え方もあるよね。うちはいま様子を見てる」 | 「お母さんには分からない」 |
| ママ友 | 「うちの子も一時期そうだったよ」 | 「教えてくれてありがとう。うちはうちで見てみるね」 | 子どもの詳しい状態 |
| ご近所 | 「今日はお休み?」 | 「はい、今日は家にいます」 | 理由 |
| 親戚の集まりで会う人 | 「学校どう?」 | 「ぼちぼちです」 | 何も足さない |
説明は3行で終わらせます
伝えるのは、次の3つだけで足ります。
- いま学校を休んでいます
- 学校や専門の人と相談しながら進めています
- 心配してくれてありがとうございます
相手が知りたいのは、たいてい「ちゃんと手を打っているか」だけです。3行を超えたところから、相手の助言が始まります。
説明役を、一人で引き受けないでください
義父母への説明は、実の子である側が引き受けます
母親が義父母を説得する形にしないでください。実の子である側から伝えるほうが、角が立ちません。誰が言うかを変えるだけで、同じ言葉でも通り方が変わります。
夫婦のあいだで方針がずれているなら、外への説明より先に家の中を整えます。そろえるのは1点だけで足ります。くわしくは 不登校で夫婦の意見が合わないとき にまとめました。
弱っているときに、正論を浴び続けないでください
いま消耗しているなら、会う回数を減らす判断は逃げではありません。親戚の集まりを1回休んでも、失うものはほとんどありません。親が倒れると、家の中の全部が止まります。
眠れない日や涙が止まらない日が2週間以上続くときは、我慢しないでください。スクールカウンセラー・自治体の相談窓口・心療内科を、早めに使ってかまいません。親自身の消耗については 不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたら に、限界のサインとセルフケアをまとめています。
よくある質問
「甘やかしすぎ」と言われました。どう返せばいいですか
1行で止めてください。「心配してくれてありがとう」で十分です。反論すると、相手はさらに説明を求めてきます。甘やかしかどうかの議論に、勝ちも負けもありません。
ママ友に、不登校を隠していてもいいですか
隠してかまいません。話す義務は、どこにもありません。話す相手は、あなたが選んで大丈夫です。言わなかったせいであとから困る場面は、ほとんどありません。
親戚の集まりに、子どもを連れて行くべきですか
本人に聞いてから決めてください。行けそうなら短時間だけ、しんどそうなら家で待てる形にします。「みんなに会えば元気になる」を期待した連れ出しは、逆効果になることがあります。
祖父母と同居していて、逃げ場がありません
逃げ場は、家の外に作ってください。スクールカウンセラーは、親御さんだけの相談も受けます。費用はかかりません。家の中だけで解決しようとすると、消耗ばかりが積み上がります。
親の私が「恥ずかしい」と思ってしまいます
思ってしまう自分を責めないでください。恥ずかしさは、これまで大事にしてきたものの裏返しです。問われるのは感情ではなく、その感情のまま子どもを動かすかどうかです。
まとめ
- まわりの理解は目標から外す。説明で分かってもらえた家庭は、ほとんどない
- 刺さるのは味方だと思っていた人の一言。言い方が下手なせいではない
- 迷ったら「この返事のあと、子どもから見て私はどっち側か」で決める
- 返事は3行まで。長くするほど、相手の助言が始まる
- 義父母への説明は実の子である側が引き受ける。一人で背負わない
今日できる一歩は1つです。次に会う人への返事を、先に1行だけ決めておいてください。決めてあると、その場で言葉を探さずに済みます。
まわりの目が気になるのは、あなたが子どもの将来を本気で考えているからです。その力は、説得ではなく子どもの隣で使えます。まわりの理解は、あとからついてくることもあります。
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