不登校や行き渋りの子の暴言に悩むとき、先に守ってほしいのは親御さんの心です。暴言は言葉の暴力で、受け続ければ親でも心がもちません。子どもの気持ちを考えるのは、親の心を守ったあとで間に合います。
「うるせえ」「死ね」「お前のせいだ」。学校を休み始めてから、わが子の口から出る言葉が変わった。言い返せば荒れ、黙っていれば続く。誰にも言えないまま、夜に検索している方は少なくありません。
元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして保護者の相談を受けています。子どもの暴言や暴力を、誰にも言えずに抱えている保護者を何人も見てきました。
不登校の子の暴言、先に守るのは親
いまの様子が表のどこに当てはまるかで、親が今日することは変わります。下の行に近いほど、家の中だけで抱えないでください。
| いまの様子 | 親が今日すること |
|---|---|
| 言葉だけ(「うるせえ」「死ね」など) | その場を離れる。親がつらさを話せる相手をもつ |
| 物を投げる・壁やドアをたたく | 担任かスクールカウンセラーに家の様子を伝える |
| 親をたたく・ける | 我慢せず、教育相談や児童相談所に親が相談する |
| 物を使ってたたく・けがをした | ためらわず警察(110番・#9110)に連絡する |
表のいちばん上の行でも、親がつらいと感じたら相談して大丈夫です。「まだ相談するほどではない」と迷う段階のほうが、落ち着いて話を整理できます。
親が傷つくのは当たり前
子どもの暴言で傷つくのは、親として弱いからではありません。暴言は親の心を傷つける言葉の暴力だと、私は考えています。たたく・けるは、相手が子どもでも本当の暴力です。
わが子からのことだからと、我慢してしまう保護者はとても多いです。「私の育て方のせいだから」と、自分を責めながら受け続けている方もいます。けれども受け続けていたら、いくら親でも心がもちません。つらいと感じたら、ケアが必要なのは親御さんのほうです。
外に相談するのは裏切りではない
親が外に助けを求めることは、逃げでも裏切りでもありません。子どもの暴力を止めることが、あとで子ども自身の心を守ることにつながります。
我慢するほど大きくなりやすい
手が出ても我慢を続けていると、暴力は少しずつ大きくなることがあります。素手だったものが、物を使ってたたく形に変わるかもしれません。物を使うようになってからでは、家族だけで止めるのがむずかしくなります。素手のうちに、勇気を出して外に伝えてください。
止めることが子の心も守る
子どもは、落ち着いたあとで自分のしたことを後悔します。「あんなことをして本当に申し訳なかった」と、あとから思う日が来るかもしれません。暴力が大きくなるほど、後悔も大きくなります。早く止めることは、子どもが将来かかえる後悔を減らすことでもあります。
親だけで相談できる場所
相談は、子どもを連れていかなくても親だけでできます。
- 学校:担任・スクールカウンセラー
- 市区町村:教育相談・教育支援センター
- 児童相談所:相談専用ダイヤル 0120-189-783(無料)
- 警察:相談専用電話 #9110(けがの危険があるときは110番)
児童相談所は、虐待だけでなく子育て全般の相談を受けています。受付時間や窓口は地域で違うので、お住まいの自治体の案内も確かめてください。
電話でそのまま言える一言
最初の一言は、短くて大丈夫です。相談窓口には、次のように伝えられます。
「小学生の子どもが学校を休んでいて、家で親に手が出ます。どうしたらいいか相談したいです」
担任やスクールカウンセラーには、家の様子を伝えてから学校の様子を聞きます。
「最近、家で言葉が荒くなっていて困っています。学校で変わった様子はありませんでしたか?」
暴言が出たときの動き方
暴言や暴力には、やり返すことも、全部受け止めることも勧めません。親ができるのは、その場を離れることと、外に伝えることです。
力でやり返さない
力に力で対抗するのは、得策ではないと私は考えています。親のほうが圧倒的に強いうちは、子どもをおさえこめるかもしれません。ただし、おさえこまれた記憶は恨みとして残ることがあります。子どもが大きくなり、親の力が弱くなったときの代償は大きいです。
全部は受け止めない
「親なのだから受け止めなければ」と考える必要もありません。全部受け止めていると、暴言や暴力は大きくなっていくことがあります。受け止める相手が親しかいない状態を、先に変えてください。
その場をいったん離れる
暴言が始まったら、言い返さずに部屋を出てかまいません。
「今の言葉はつらいから、少し離れるね」
短く伝えて、別の部屋で少し時間をおきます。荒れている最中の子に、長い説教は届きません。話すのは、お互いが落ち着いてからで十分です。
暴言を吐く子に起きていること
暴言の裏には、親への思いか、行き場のない怒りがあると私は見ています。どちらなのかは、家の様子と学校の様子を合わせて考えます。
身近な親にぶつけている
学校に行けない子は、怒りや不安をどこにぶつけていいかわかりません。行き場のない気持ちを、いちばん身近な親にぶつけている状態です。母親にだけ暴言が向く場合も、母親がいちばん近くにいるからかもしれません。
休んでいる罪悪感がある
子どもは、ただでさえ休んでいることに罪悪感をもっています。「学校どうするの」の一言が、暴言のきっかけになる場合があります。ゲームを急に取り上げて、大きな衝突になった例も何度も見ました。
暴言の直前に何があったかを、1週間だけメモしてみてください。きっかけが見えると、避けられる衝突が出てきます。ゲームのルールの決め方は、小学生のゲーム依存が心配なときに書きました。
担任に学校の様子を聞く
何に怒っているのかを探すとき、家の中だけで考えないでください。休む前の学校での様子に、ヒントがあるかもしれません。担任には「休む前、友だちや授業のことで気になる様子はありましたか?」と聞いてみます。
外の人の目も借りる
毎日暴言を受けている親が、落ち着いて原因を考えるのはむずかしいことです。親の目に加えて、外の人の目も借りてください。担任やスクールカウンセラーと一緒に、今後の方針を決めます。1人で決めない、家族だけで決めないことが、親と子の両方を守ります。
親がもう限界のとき
眠れない、涙が出る、家に帰るのが怖い。1つでも当てはまるなら、先に休むのは親御さんです。子どものために何かをする前に、親自身のしんどさを話せる場所を作ってください。
話す相手は、配偶者でも友人でもスクールカウンセラーでもかまいません。親自身の限界サインと頼れる先は、不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらにまとめています。
受診を考えるサイン
次の4つのうち1つでも2週間以上続くときは、小児科や児童精神科に相談してください。
- 朝、布団から起き上がれない
- 夜中に何度も目が覚める
- 食欲が落ちている
- 以前楽しめていたことを楽しめない
「死にたい」と口にする、自分の体を傷つける様子があるときは、2週間を待たずに相談します。暴言の背景に発達の特性があるかどうかは、記事の中で私が判断できることではありません。気になるときも、小児科や児童精神科で聞いてみてください。
よくある質問
Q. 暴言は甘えやわがままですか
甘えかわがままかを分けるより、何に怒っているかを見るほうが役に立ちます。同じ言葉でも、背景は子どもによって違います。見分けがつかないときは、担任に学校の様子を聞くところから始めてください。
Q. 父親が強く叱れば止まりますか
一時的に止まることはあります。ただし力でおさえる方法は、恨みを残すおそれがあります。父親には、母親が1人で受けている時間を減らす役をお願いしてください。夫婦で対応が割れるときは、不登校で夫婦の意見が合わないときも参考になります。
Q. きょうだいに暴言が向くときは
きょうだいに我慢を続けさせないでください。別の部屋に移れるようにして、あとで「あなたは悪くないよ」と伝えます。きょうだいの様子も、担任に共有しておくと安心です。
Q. 相談したら子どもに恨まれませんか
相談したことを、すぐ本人に伝える必要はありません。まず親だけで相談し、子どもへの伝え方も相談先と一緒に考えます。
まとめ
- 不登校の子の暴言で、先に守るのは親の心
- 手が出ているなら我慢せず、親が外に相談する。相談は裏切りではない
- 暴言にはやり返さない・全部は受け止めない・その場を離れる
- 何に怒っているかは、担任や外の人の目も借りて考える
- 親が限界なら、先に親のしんどさを話す場所を作る
今日できる一歩は、表でいまの様子を確かめて、相談先の電話番号を1つスマホに入れておくことです。
暴言は、子どもが苦しさをぶつける相手が親しかいないサインかもしれません。親が外とつながれば、親にも子どもにも頼れる相手が増えていきます。
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