冬休み明けに学校へ行きたくないと言われると、親は年末の過ごし方を思い返します。夜ふかしをさせたから、宿題を手伝わなかったから、と自分を責める方も多いはずです。
冬休みのあいだは機嫌がよかったのに、1月に入ったとたん朝が重くなる子がいます。私は1月になると、同じ相談を何度も受けてきました。
元小学校教員として約20年、いまは公認心理師・スクールカウンセラーとして学校で相談を受けています。1月の始業式に来られなかった子と、その保護者に何度も会ってきました。
私の現場は小学校です。中学以降は事情が変わりますので、小学生の親御さん向けとして読んでください。
冬休み明けに学校へ行きたくない理由は冬休みにない
冬休み明けに行けなくなるのは、冬休みの2週間が原因ではありません。1学期からたまってきたものが、休みの終わりにかけて溢れてきます。
「学校に行きたくない」の一言は、溢れたあとに出てくる場合が多いです。
溢れたのは2学期までの積み重ね
行きたくない気持ちは、ある日とつぜん生まれるものではありません。1年生のころからの小さなできごとが積み重なります。
- 友だちとの関わりでうまくいかなかった日
- 授業がわからないまま進んだ時間
- 担任との相性が合わなかった場面
- 行事で思うようにできなかった経験
小さなできごとが重なって、コップの水が少しずつ増えていきます。溢れた日に、子どもは「行きたくない」と言葉にします。
冬休みは、たまたま溢れる時期と重なりやすいだけかもしれません。
親が疑いがちな4つの原因
冬休みの過ごさせ方を責めても、3学期は変わりません。親が原因だと思いやすい4つを、現場で見てきたことと並べます。
| 親が疑いがちなこと | 実際に起きていること | 先にやること |
|---|---|---|
| 夜ふかしをさせてしまった | 生活リズムは行けない理由の一部にすぎない | 起きる時間より、2学期の様子を担任に聞く |
| 冬休みの宿題が終わっていない | 宿題は行きたくない気持ちの引き金の1つになる | 担任に宿題を減らせないか相談する |
| 甘やかしすぎた | 休めた子ほど、本音を言葉にできるようになる | 言えたことをまず受け止める |
| 冬休みは元気そうだった | 元気に見えるのは回復のしるしとは限らない | 3学期を持ち出さずに休ませる |
冬休みに元気に見える理由
冬休みに元気そうに見えるのは、全員が休みだからです。
全員が休みだと罪悪感が減る
学期中に休んでいる子は、休むことに罪悪感を持っています。みんなが学校にいる時間に、自分だけ家にいるからです。
冬休みは公式に全員が休みです。自分だけ休んでいる感覚が薄れるぶん、学期中とは違う気持ちで過ごせます。
長期休業のあいだに元気になる子が多い印象を、私は持っています。
元気な姿が本来のその子
休みのあいだに見せる元気な姿が、本来のその子の姿かもしれません。学期中にしんどそうに見えていたのは、学校で消耗していたからだと考えられます。
元気に見えるからといって、学校に行ける状態に戻ったとは限りません。元気な姿と登校できる状態は、別のものとして見てください。
「3学期から行こうね」は言わない
冬休みのあいだは、3学期の登校を持ち出さないほうが安全です。
期待を持つのは悪くない
元気になった姿を見れば、3学期に期待するのは自然です。行ってほしいと願うのは、親の本心の表れです。
期待を持つこと自体は、悪いことではありません。
声かけが子を現実に戻す
困るのは、期待が言葉になって子どもに届くときです。
「だいぶ元気になったね。3学期からは行こうね」。休んでいる子にとっては、現実に引き戻される一言かもしれません。
休みのあいだは、登校を意識させる声かけをしなくてよいと思います。
期待を言う役は担任に渡す
期待を言葉にする役は、親ではなく担任に渡してください。担任は他人です。関係が良好なら、「3学期に待ってるよ」は届く場合があります。
同じ言葉でも、毎日そばにいる親から言われると逃げ場がなくなります。担任には「こちらからは登校の話をしないようにしています」と一言添えると、大人の動きがそろいます。
冬休み中に親ができる3つ
冬休みにやることは、生活リズムを戻すことではありません。2学期に何がたまったのかを知ること、休ませること、家の外とのつながりを残すことの3つです。
2学期の様子を担任に聞く
最初の一手は、担任に2学期の様子を聞くことです。家で子どもから聞く話は、学校での姿の一部にすぎません。
「2学期のあいだ、学校で変わった様子はありませんでしたか」と聞いてみてください。あわせて「休み時間や授業中はどんな様子でしたか」と聞くと、家では見えない部分がわかります。
(問い詰める形にならないよう、あくまでも自然な会話の流れの中で。)冬休み中に連絡しづらければ、終業式の日か、3学期が始まる前の週の電話で構いません。
とことん休ませる
冬休みのあいだは、とことん休ませてください。起きる時間や寝る時間を整えようとすると、家の中が戦いになります。
リズムの乱れだけが理由で行けなくなる子は、私が見てきた中ではほとんどいません。昼夜逆転との付き合い方は不登校の子の夏休みの過ごし方にまとめています。
家の外のつながりを1つ残す
冬休みのあいだも、家以外の人と会える場を1つ残してください。不登校でいちばん心配なのは、家から出られなくなることです。
祖父母の家でも習い事でも、近所の公園でも構いません。年末年始は親戚が集まるぶん、家族以外と話す機会をつくりやすい時期です。
ただし「学校どうしてるの」と聞かれる場もあります。聞かれたくない相手がいるなら、子どもを連れていかない選択もあります。
冬休みは親も休めない
年末年始は、親のほうが消耗しやすい時期です。
年末年始に親の消耗が重なる
帰省の準備や来客の対応が重なり、子どもは一日中家にいます。親戚から「学校はどうしてるの」と聞かれる場面も重なります。
12月から1月にかけて、親がいちばん疲れやすいと感じています。まわりへの説明に困ったときの線引きは不登校で周りの目がつらいときに書きました。
親がしんどいときの相談先
親がしんどいまま3学期を迎えると、子どもの不安も強くなります。親の不安は、子どもの罪悪感を強めます。
一人で抱えないでください。スクールカウンセラーや教育センターは、3学期が始まってすぐから相談できます。
親自身の限界サインと休み方は不登校の親が「しんどい」「もう疲れた」と感じたらにまとめています。冬休みのうちに読んでおくと、1月に動きやすくなります。
受診を考えるサイン
次の4つが2週間ほど続くときは、休ませるだけでは足りないかもしれません。
- 朝、布団から起きられない
- 夜中に何度も目が覚める
- 食欲が落ちている
- 前は楽しめたことを楽しめない
小児科やスクールカウンセラーに相談してください。いじめが疑われる場合は、2週間を待たずに学校へ相談してください。
よくある質問
Q. 冬休みのあいだに生活リズムは戻すべきですか
戻せるなら戻したほうが、1月の朝は楽になります。ただし家の中が戦いになるくらいなら、優先しなくてよいと思います。
朝起きられないことと、学校に行きたくない気持ちは、別の問題として扱ってください。
Q. 冬休みの宿題が終わりません
全部やらせる必要はありません。担任に相談すると、減らす形にできる場合があります。
宿題の仕分け方と担任への頼み方は不登校で宿題をやらない・できないときは?にまとめています。
Q. 始業式だけでも行かせたほうがいいですか
本人が行きたいと言うなら、ありだと思います。親が決めて連れていくのは勧めません。
「行かされた」の記憶が残ると、そのあとの親子関係に響きます。分かれ目は、本人が行きたいかどうかです。
Q. 「3学期から行く」と本人が言っています
言葉どおりに受け取りすぎないほうが、親は楽かもしれません。行けたらラッキーくらいの構えでいると、行けなかった日に落ち込まずにすみます。
行けた日は褒めすぎないでください。褒める的は、結果ではなく頑張ろうとした気持ちです。行けた日のあとにまた休む子については夏休み明けに行けたのに、また休むで詳しく書きました。
Q. 冬休みに塾や家庭教師を始めるのはどうですか
身体症状が出ている子には、まだ早いと思います。まずは心の回復が先です。
勉強に前向きで、遅れるのが嫌だと言う子なら合う場合があります。初めての場所や初めての人への抵抗が強い子は、慎重に考えてください。
まとめ
- 冬休み明けに行けないのは、冬休みの過ごし方のせいではない
- 溢れたのは、2学期までの小さな積み重ね
- 冬休みに元気に見えるのは、全員が休みだから
- 「3学期から行こうね」は言わない。期待を言う役は担任に渡す
- 最初の一手は、担任に2学期の様子を聞くこと
今日できる一歩は、担任への一本の連絡です。「2学期のあいだ、学校で変わった様子はありませんでしたか」と聞くだけで十分です。
冬休みに元気だった姿は、なかったことにはなりません。元気に過ごせる条件が、お子さんの中にあった証拠かもしれません。
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